Oh,Shit!





ベッドの上に男女が2人。それが妙齢の、今風に言えば若気の至りを地で行っちゃう高校生2人だったならば、それはもうやることなんて決まってるわけで。ねぇ、いい?と耳元で囁けば、肩にもたれかかっていた彼女が、頬を染めながら恥ずかしそうに頷いた。


「私…初めてなの」

「大丈夫、僕に任せて」

「…痛くしないでね?」


上気した頬と少しうるんだ瞳で見上げられてはたまったものではない。男に生まれてきて良かったと心の内でガッツポーズを決めてから、彼女の肩に手を伸ばした。正確に言うと、伸ばそうとした。
僕の腕からするりとすり抜けた彼女は、徐に立ち上がり、右腕を上に左腕を下に広げて腰を落とした。そう、まるで熊でも仕留めるかのように。


「さあ来い!」

「何故そうなった」


尚も掛け声をかけ続ける彼女は、僕が依然ベッドに座って呆然としている姿を見て、不思議そうな顔をしながら構えをやめた。


「赤司君どうしたの?具合悪いの?」

「その言葉そっくりそのまま返すよ」

「なんで?」

「いや、なんでっていうか…むしろ何あのポーズ?」

「?…レスリングだけど」

「どうしたらそうなるんだい」

「キスの次のステップはレスリングだって」

「誰がそんなこと…」

「青峰が言ってた」

「あいつか」


要らないことしかしない奴とは思っていたが、得意分野でさえ要らないことをするのに余念がないらしい。むしろお前そこしか得意じゃないんだからもっと頑張れよ僕のために働けよ駄犬。


「小町、キスの次はレスリングじゃないんだよ」

「え…!?」

「そんな驚かれるとは思わなかった」

「だ、だだだって青峰が…あのエロの申し子の青峰が言ったんだよ?」

「お前のその青峰に対する盲目の信頼はなんなの」

「青峰からエロを取ったら何も残らないのに…!何も!なぁんにも残らないのに!」

「せめてバスケも入れてやってよ」


甘美な空気はどこへやら。今の僕らの話題といえば、クラスメイトのガングロの話。こんなはずではなかった、と未だに青峰が如何にエロいことにしか脳がないかを力説する彼女の話を右から左に受け流しながらぼんやりと考えた。というか、彼氏の部屋で、ましてやベッドの上でするのが他の男の話ってどういうことなの。青峰に太陽光集中して焼け焦げればいいのに。


「でもさ、じゃあ何をするの?」

「え?」

「キスの次は何をすればいいの?」

「それは、」


ゴクリと喉が鳴る。言ってもいいのだろうか。このピュアな少女に言ってしまってもいいのだろうか。ましてや青峰の親父くさいセクハラ発言をも素直に受け入れる彼女に、こんな生臭い話を僕ができるのだろうか。


「キスの次は、」

「次は?」


キラキラと期待に満ちた瞳が俺をとらえる。さしづめ、サンタクロースが来る前夜の子どもが母親にお話をねだるかのような眼差しだ。


「一緒に、寝るんだよ」


言ってしまった。いや、言ってやった。
襲ってくる後悔に耐え切れず下を見る。しばらくして彼女の方を見ると、予想に反して嬉しそうに笑っていた。


「へぇ、楽しそうだね、」

「う、うん」


「パジャマパーティー!」


「ちが…!?」

「夜通し夢を語り合うんだね!素敵!」

「違うよ。なんでそうなるんだよ」

「お菓子も食べようね」

「……」







OH,SHIT!
















20130210


 


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