声がした。遠くの遠くの遠くで、それはうるさくない程度に俺の意識を揺り動かす。起こされてんだって気づいた時にはもう、顔の上にあった薄っぺらい本が取り上げられて、眩しいほどの青が目に突き刺さった。
「青峰、何してんの」
「…光合成」
「難しい言葉知ってるんだね。それ小学校で習うんだよ」
「俺、中学生なんだけど」
「次は二酸化炭素吸って酸素吐き出す練習しなよ」
「お前俺のこと馬鹿にしてんだろ」
「心配してんだよ」
またこんなの見て、と俺の麻衣ちゃんがポーズをとるページをしげしげと眺めてから、パタンと閉じた。お前だって見てんじゃねぇか、という言葉が胸まで出かかって止めた。空気を読むなんて俺らしくもないけれど、探りを入れる様に声をかける。
「…そんで、どうだった」
「何が」
「足」
「ああ、知ってたの」
大したことないと言うように笑って、彼女は言う。
「駄目だって」
「……」
「日常生活には支障ないけど、バスケはもうできないって」
「…そうか」
包帯とギプスで覆われた右足は、誰が見ても明らかに重症のそれで。この足を見て、痛々しいなんて周りは言うんだろうけど、俺にはこいつの中身の方が痛々しくて、今にも崩れそうに見えた。
「高校の推薦も、考え直さなきゃ」
「お前桐皇だろ」
「うん、でも違うところにする」
「なんでだよ。推薦なくてもお前の頭なら桐皇なんか余裕だろ」
「そうだけど…」
「じゃあ変える必要ねぇじゃん」
「うん、でもバスケが強いところは駄目」
「…なんで」
「見たら、やりたくなっちゃうから」
だからダメ
決定事項を言うように、だけど言い聞かせるように。きっとこれはこいつの言葉ではない。医者に言われた言葉を必死で飲みこもうとしているんだ。こんなに好きなのに、誰よりも好きなのに。
「駄目だね、もう」
「ああ」
「厳しい練習が嫌いで、コートやボール見たくない日なんて何日もあって、何度も辞ようと思ったのに」
「うん」
「ボール見ても、コート見ても、嫌いなんてこれっぽっちも思えない」
大嫌い同盟
(こんなに好きなのに)
(嫌いになるしか進めない)
20130126
その後妄想
高校はヒロイン→誠凛でおねしゃす。そんでマネジやればいいよマネジ。リコさんの右腕でファイナルアンサー