まるで愛でるような




「知ってますか土方さん」

「知らねぇ」

「ゴリラおおっと口が滑った、私たちの尊敬すべきケツ毛大魔神があの女とのデートを取り決めてきたらしいです」

「……お前近藤さん嫌いなの?」

「沖田さんもチャイナとおやじ狩りじゃないや潮干狩りに出かけたそうで」

「…あっそ」

「こんなクソ暑いのに浮いた話の1つもないのは土方さんと私くらいですね。」

「……」



そのクソ暑い中よくそんなにクルクルクルクル口が回るもんだと感心する。煙草の灰を灰皿に落とし、もう一度口に戻す。ただそれだけの間に、机に整然と並びいまかいまかと記入を待つ書類達の上に汗が落ちた。猛暑とはこのことだ。



「あちーな」

「アイス食べたい?私もです。買いに行きますか」

「都合のいい空耳だな。サボりたいだけだろお前」

「まさか!自分が破壊した街の報告書と反省文なんですからサボりたいなんて、そんなそんな……」


謙虚に答えた奴の右手におさまるペンは明らかにへのへのもへじを描いていた。バカにするにもほどがある。



「冷凍庫」

「へあ?」

「アイス」

「どうしたんですか副長。ついに言語障害ですかやったね」

「ちげーよ。冷凍庫にアイス入ってるって言ってる…ってお前今やったねって言った?やったねって喜んじゃった?」

「気のせいですよ。ついに幻聴ですかわーい」

「アイス没収」

「すんませんアイス食べたいですお願いします」

「……10分だけ休憩な」

「やったね副長愛してる!」



バタバタと遠ざかっていく足音を覆うように蝉とひぐらしの鳴き声が響いてはじけた。
甘ぇな俺も。





まるで愛でるような





20110722


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