私のおじいちゃんは道場をやっている。門下生には近藤さんという良い人なのにちょっと勿体無いゴリラおじさんがいるだけた。つまり家の道場は、むさいゴリラとじじいが竹刀を振るという華もヘッタクレもない場所なのだ。さすがにゴリラだけでは道場も先行きが危ういからと、客寄せ程度に私も稽古に参加するようになって早1週間。早くも最初の客寄せに釣られた馬鹿な男がやってきた。
「すいやせん。きゃくよせパンダがいるどーじょーはここですかい」
中国に行け。
「あれちがいやしたか。あねうえがかわいーおないどしのおんなのこがいるからいってこいっていったのに。おかしいや、じじいとゴリラとこけししかいねぇ」
「ははは!こけし!わははは!」
なに笑ってんだじじいぃい!
「あんたがあねうえのいってたおんな?」
「……」
姉上は少しおめめが悪いようだ。どこでどう勘違いしたか知らないが、私は明らかにこいつより5つ以上は年上。大人の「同い年」の使い方なんて知ったこっちゃないが、5歳差は私にとって上下関係をなすのに十分な役割を持っている。一緒にされては困るのだ。
「たいへんだ、あねうえはめがおかしくなったんだ」
そうだね、私とあんた同い年に見えないもんね。
「こんなのがかわいいなんて…!」
思わず振り上げた竹刀を近藤さんにそっと押さえられた。とめるなゴリラ!私はこいつを仕留める!
「総悟くんと言ったかな?君は刀が好きかい?」
「すきなんかじゃない」
「ほう、じゃあなんでこの道場に?」
「あねうえがいるから」
「姉上がここに行けと言ったから君は来たのかな?」
「ちがいまさぁ、つよくなりたいからきたんでぃ!」
「なんで強くなりたいんだい?」
「きまってらぁ」
「あねうえをまもりたいからでさぁ!」
にかっといい笑顔で言い切った少年に、おじいちゃんも近藤さんも大きく頷いた。どうやらこの少年の処遇は決まったらしい。入門決定だ。
「私のことはこれから師範と呼ぶように」
「はい、しはん!」
「俺は近藤勲。門下仲間が増えてうれしいな〜」
「よろしくおねがいしやす、こんどうさん」
「……」
2人の大人にしっかりした口調で挨拶した後、少年は私の方に顔を向けた。なにも言わずにぶすっとしている私の顔を見据え、少年は口を開いた。
「おれはおきたそうご。あんたは?」
「……小野、小町」
ようやっと声を発した私に満面の笑顔を向け、彼は笑う。私も彼の笑顔につられて微笑を返した。先ほどの険悪さが嘘のように和やかな雰囲気があたりを包む。
「よろしくな、ブス!」
竹刀が宙を舞った。
はろーまいわーるど
(ということがあって以来私は総悟が嫌いなんですよ土方さん)
(それ何年前の話だよ)
20110311
(ということがあって以来私は総悟が嫌いなんですよ土方さん)
(それ何年前の話だよ)
20110311
bkm