子どもの都合




「太子さん」

「…ん」

「起きてください、太子さん。もうお昼ですよ」

「アレン」

「おはようございます」

「おはようアレン、そして降りろ変態紳士」


いつもなら目覚めて真っ先に目に入るはずの天井が今日は半分以上白くてふわふわしたものに覆われていた。それもそのはず、この少年が私の腹に馬乗りになり顔を覗き込んでいたならば、天井なんて見えるはずもない。ため息をついて上半身を起こそうとすると、がっちりホールドされた腰のおかげで阻まれた。足をどけろ変態紳士。


「いい眺め」

「私には最悪の眺めだよ。学校で習わなかったの?夜這いはいけないことなんだよ」

「昼ですからノープロブレム」

「あんたの頭がプロブレムだらけだ。大体なんでワイシャツのボタンとめてないのよ」

「すぐ脱ぐんだから関係ないでしょ?」

「脱ぐな」

「太子さんこそまたキャミソール1枚で寝たんですね。まったく僕の気も知らないで」

「犯罪者一歩手前の人間の気持ちなんて知りたくもない」

「まだ何もしてないじゃないですか」

「これからしそうだから怖いんじゃないですか」

「なに言ってんですか」


僕は曲がりなりにも紳士ですよ
ギシリとベッドをきしませながら少年は言う。その迫り方とセリフ回しが15歳の少年とはとても思えなくて背中がゾクリと震えた。紳士はこんなことしないと反論すれば、紳士にこんなことさせてるのは太子さんでしょ、となんとも身に覚えのない言いがかりをつけられる始末。


「大人をからかうもんじゃないよ」

「子どもの本気をからかうものでもありませんよ」

「からかってなんか、」

「大人ってホント大変ですね。建前とか社会的地位とか」

「……」

「でもそんなの待ってたら日が暮れちゃいます」


頬をなでるようにさする手に目を細めると、額に触れるだけのキスが落ちてきた。
ほんと、キザな奴


「…こんなのどこで習うんだか」

「知りたかったら教えて差し上げます」


もちろんベッドの中で、ね
妖艶に微笑む少年に心臓がドクンと波打つ。上がる熱を悟られないよう顔をそむけて、ノーセンキューとだけ吐き捨てた。


「覚悟してくださいね」

「だからノーセンキューだってば」

「太子さんがそのつもりなら僕も手加減しませんから」

「ちょっとどこ触って、」

「翻弄、されてください」







子どもの都合

(もう待ちくたびれちゃったんです)









20120503

ゆき様リクエスト「年下アレンくんのはだかYシャツ」
はだかYシャツである必要がどこにあったのか。さーせん。年上ヒロイン攻め美味しいです。