アマテラス
世界が輝き始める瞬間というものは誰にでもある。各言う俺にも輝き出した時はあったわけで。今日も今日とてその光は色褪せることなく俺の周りを照らしている。きっとこれを失くしたら人は死んでしまうんだろうなんて、そんな非現実的なことを考えるくらい。
「太陽っていつ沈むんだろうな」
「…今は7時くらいじゃない?」
「そういうことじゃないんさ」
「どういうことだってばよ」
報告書を書く手を休めて彼女は俺を見る。さっきから1文字も進んでいないこの文字の隊列に飽きたということがバレバレである。
「太陽が俺だけのものになったらいいのになって」
「無理でしょ。どんだけ野心にあふれてるの」
「できるさ、できるに決まってる。だって俺だもの」
「自意識過剰だよ」
「なんだよ嫉妬か?」
「どこから来るんだよその自信」
再び報告書と対面して彼女はうなる。俺もうなる。
「なによ、ラビはもう報告書書き終えたんじゃん。何をそんなに悩む必要があるんだよ」
「俺だって悩むことくらいあるさ」
「どのエロ本買おうかなんて悩みに入らないよ」
「そんなことで悩まねーよ!」
「どんなの買ってんの。熟女系か、ロリ系か」
「…買わねーよ」
「目をそらすときは怪しいってコムイさんが言ってた」
「買わねーよ」
「何この子、目が血走ってるんですけど」
「徹夜中なんだから仕方ないだろ。ああ、もう、俺はどう答えればいいんさ!」
机に突っ伏してうな垂れた。お前のことで悩んでるっていうのにどうしてまたお前に悩まされなくちゃいけないんだよおかしいだろ不公平だろ。
こんなにも俺ばっかお前が好きで。
「報われねーなぁ」
「いつもでしょ」
「そうね。特にお前のせいでね」
「言いがかりだ」
「これでも俺はお前に感謝してんだよ。お前のおかげでなんだかんだ楽しいし。なんつーか世界に色つけたらこんなんだろうなって」
「私、美術は苦手なんだけど」
「そういうことじゃないんさ」
「わけが分からないよ」
「分かるようになったらきっとお前は俺から離れるよ」
机に突っ伏したまま聞こえるか聞こえない程度の音量でつぶやく。聞こえなくていい、別に届いてほしくて言ってるわけじゃない。ただ、あまりにも上手くいかないことばかりだと気持ちも下を向くというもので。少し卑屈になるのは必然だろう。
「ないよ」
「…ん?」
「離れないよ」
「お前意味わかってないじゃん」
「わかんないけど、それはないんだよ」
少し顔を上げると太子と目があう。2〜3秒無言で見ていると左手が俺の頭の上へ持ち上がった。
ゴン、
「いて、」
「1人で何ウジウジしてんの」
「……」
「たとえラビが私から離れても、私から離れることはないよ」
「…うん」
「だからそんな悲しそうな顔しないでよ、相棒」
笑った彼女の顔はやっぱり太陽みたいだと思った。
アマテラス
(まぶしいのに、目をそらせない)
20120724
nano様リクエスト「ラビの甘」
時間軸的にはラビさんがブックマンとして教団を離れていくちょい前になるかなという妄想
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