ラッキーガール




今日は朝から運がなかった。
7時にセットしていた目覚ましは壊れてならないし、食堂に行ったらみたらし団子が食材切れで作れないと言われるし、1日オフと聞いていたのに急遽決まった任務に駆り出されることになって全力でAKUMA狩りをしている最中だし。

極めつけは、僕が平生から苦手として止まない彼女がこの任務のファインダーに指名されていたという事実。
もう1度言おう。今日の僕は運がない。


「アレンさん大人気ですね。後ろからお友達がいっぱい遊びに来てますよ」

「僕の友達みんな物騒な物持ってるんですけど」

「職場と変わらないじゃないですか。類は友を呼ぶって本当ですね。それじゃ私はこれで」

「待ちなさい太子、どこに行くつもりですか」

「え…直帰しますよ?デートのお誘いとかはちょっと…」

「邪推はやめてください。そうじゃなくて、なに帰ろうとしてるんですか」

「だってイノセンスないし」

「まだここに来て30分しか経ってないじゃないですか!もっと本気で探しなさい!」

「えー…」


アレンさんお母さんみたいですね、とふてぶてしい表情でノロノロとイノセンス捜索の準備にかかる彼女は言う。余計なお世話だと声を大にして言いたい衝動を抑えて迎撃態勢に入った。AKUMAの数はおよそ20。見る限りレベル1が大半だ。これなら大方30分もすれば片がつく。


「…何してるんですか」

「イノセンス探しですけど」

「どうして僕のコートをめくってるんですか!ないですよ、そんなところに!」

「灯台下暗しという言葉を思い出したので」

「思いつきで行動しないでください」

「でもアレンさんが今日はついてないと仰るので、奇怪のせいかと」

「それだったらイノセンスが体内にある僕はいつでもついてないことになるじゃないですか」

「……!」

「…何ですか」

「だからいつも不幸なんですね」

「君は歯に衣着せることを学ぶべきですよ」


彼女の僕に向ける可哀想なものを見る目を一睨みすると、本当のこと言っちゃってすみませんと明らかな挑発が返ってきた。そして彼女は続ける。


「アレンさんは今日はついてないと仰りますが、私は頗るついてるんですよ」

「ああ、そう。自慢ですか?」

「目覚ましなくても起きれたし、好物のプリンを朝ごはんにいっぱい食べれたし」

「良かったですね。自慢ですか?」

「今日の私はラッキーガールなんです」

「それは残念でしたね。急にこんな任務が入らなければ、もっとラッキーな1日を過ごせたんじゃないですか」


鼻で笑うように吐き捨てて、彼女からAKUMAへと視線を動かした。視界に入らなくなったその存在を彼女の声だけが主張するように、ぽつりとこぼした。


「それがラッキーなんですよ」








ラッキーガール

(貴方にはアンラッキーでも)













20120703
青羽さまリクエストで「ツンデレ馬鹿ヒロインとアレン」
人によって幸運なんて違うんだよ、っていうお話