わくわく、ふわふわ






明日は土曜で学校は休みだから、今日は渡良瀬の家に泊まらせてもらうつもりでいた。晩御飯をご馳走になった後は渡良瀬の部屋に行く。せっかくだから部屋着も女の子用のものに着替えることにした。

さすがにパジャマは友ちゃんのお下がりを貰うわけにいかないから自分で買ってる。ネットがある時代に生まれてよかったよ。今日のはnarue。プルオーバーの白いワンピース。

俺が着替えている間、渡良瀬はベッドに横になってもうゲームの続きを始めていた。

普段は一緒にいてもそれぞれ別のことをすることが多い。渡良瀬はゲームばっかりだし、俺は俺で爪の手入れしたり。話しかけても「んー」とか「あー」しか返ってこないしね。

いつもはそうなんだけど、今日は珍しく渡良瀬のほうから話しかけてきた。


「お前そういうの着て外歩きたいとは思わないの」
「そういうのって、ルームウェアで?」
「ああ、それ部屋着だったんだ」


渡良瀬には女の子の服の違いがあまりわからないらしい。まぁ今着てるのに関しては生地以外普通のワンピースと殆ど変わらないから仕方ないか。


「女装で外出しないのかってこと?」

「うん。いっつも俺の部屋で着てるだけで満足なの?」

「それは、外でも着てみたいって気持ちはあるけど。やっぱバレたときのこと考えるし。学校の奴に会っちゃったら最悪だし…」


元々小柄だからヒールが高い靴を履かなければ身長に関しては問題ないと思う。服も出来るだけ身体のラインで男っぽい感じが出ないものを選ぶようにしてるし、声さえ発しなけれパッと見バレない自信はあった。

だけど知り合い相手じゃそうもいかないだろう。


「場所が遠ければ問題無いんじゃないの。顔見知りがいなさそうな所」

「遠いって、具体的には?」

「明日姉ちゃんの運転で親戚の家に行くことになってるんだけど。その近くに最近アウトレットモールができたんだよ。お前もたまには自分で直接手にとって買い物したいだろうから誘ってみればって、姉ちゃんが」

「……なにそれ。友ちゃんは天使なの?」


優しすぎるよ友ちゃん。そんなの絶対行きたい。行くに決まってる。


「渡良瀬は女装してる奴と一緒に歩くの嫌じゃない?」
「それを気にするんなら最初から誘ってないよ。」


渡良瀬は感情表現乏しいし、意地悪なことも沢山言ってくるけど、こういう所はすごく好きだな。優しい人たちに囲まれて俺は幸せだよ。


「着ていく服どうしよう…。渡良瀬も一緒に考えよう?!」
「好きなの着ていけよ。何着ても文句言わないから」
「それは何着ても似合うって意味?」
「……ああ、うん。もうそれでいいや」


わくわくして、ふわふわする。
楽しみすぎて今日は寝れないかもしれない。

嬉しくて飛び跳ねたいくらいの衝動を抑えながらクローゼットを開ける。


明日、一番可愛くなれる服を探すために。





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