フォーマンセル
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「あら、ツキじゃない。」
『ツバキさん。』
待機所へ向かう途中の廊下で戌の面をつけたツバキとすれ違う。彼女は半年前に暗部に入隊した、ツキの先輩であり後輩だ。
「これから任務?」
『はい。ちょっとそこまで、って感じですけどね。ツバキさんも任務ですか?』
「ええ。なんだかんだ働き詰めよ。ツキも無理しないようにね。」
暗部の仕事は内密に、慎重に行わなければならないため、お互い任務について深入りはしない。暗黙の了解というものだ。
ツバキに小さく会釈をすると今度こそ待機所へ向かう。
すると前方からどたばたと暗部が3人走ってきた。
「ツキ!丁度いいところにいた!このあと任務は?!」
先頭を走っていた猿の面をつけた男がツキに問い掛ける。
『あと3時間ほど暇ですが…なにかあったんですか?』
不思議そうに首を傾げれば、男は「とりあえず現場に向かうぞ」
とツキに走るよう促した。
わけも分からず連行(?)されながら状況を把握する。
『…つまり、うちの里の近くで盗賊が暴れている、ってことでいいですか?』
猿の面をつけた男の隣を走りながら今度はツキが問い掛ける。
男は頷くと声のトーンを下げ、
「ただの盗賊ならいいんだがな、霧隠れの抜け忍が混ざっているという情報も入っているんだ」
霧隠れ…?と頭にはてなが浮かぶ。なぜ盗賊と霧隠れが?と思ったがそれはとっ捕まえて尋問部に引き渡せば一発でわかるだろう。
『それで、里の近くって具体的にどこら辺なんですか?』
門を抜けたところでツキは問い掛けたが、男は軽く首を振ると"わからない"と小声で言った。
ツキははぁ、と溜息を吐き、自分の感知網を最大限まで広げた。
「わかるか?」
『…ありました。ここから北西に800メートル。』
ぽつりと零せばでかした、と男が笑う。
ツキを先頭に走りながら急遽組まれたこのチームに男は声を掛ける。
「では今回はこのフォーマンセルで動く。霧隠れの抜け忍以外は全員殺してもいい。抜け忍に関しては尋問部に引き渡したいんでね、くれぐれも殺さないように頼むよ。」
『「「御意。」」』
2,3分走ると4人の目に大きな屋敷のようなものが見えてきた。
その中からは刀が交わる鋭い音や、チャクラがぶつかる気配がある。
『…木ノ葉の人間か?』
感知に引っかかった人間をじっくり観察すると、確かに額には木ノ葉の額宛がある。
「木ノ葉の人間が応戦しているのか?」
ツキの声に男が驚いた様に問う。
『はい。まぁここは里の近くですし。ただ今感知できる木ノ葉の人間は4人。盗賊や抜け忍は…12人。いくらなんでも分が悪い。さっさと突入しましょう。』
その屋敷から目を離さずツキは言う。
「俺とツキが中で応戦する。お前らは屋敷周りの警戒を頼む。他に仲間が居ないとは限らないからな。では。」
言い終わると同時にツキと男の姿は消えた。
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