存在価値
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がちゃり、と家のドアを開ける。
裸足でひたひたと歩けばフローリングの冷たさが妙に心地よかった。
面も装束もそのままにベッドへ倒れ込めば小さく溜息を吐く。
『…私に部隊長なんて、出来るわけない。』
自分の戦闘スタイルが暗殺向きなことは6歳の時点で自覚していた。この歳にしては小柄な身体。全ての性質変化を扱える器用さ。感情の乏しさ。そして代々受け継がれてきたこの血継限界ー。
言ってしまえば人を殺す能力に長けた人間なのだ。
今の自分の存在価値と言えば、人を殺すこと。そしてこの里を守ること。それ以外、彼女には見当たらなかった。
ぎゅっと拳を握ればベッドから立ち上がる。
『…夜の任務の支度しないと。』
ばさばさと装束を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。最低限の支度を済ませれば、何故か沈んでしまった心を家に置き去りにするように、足早に暗部待機所へ向かった。
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