暗部へようこそ
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『ミナトさんが四代目火影…』

もぐもぐと団子を頬張るツキ。

ミナト班との出会いからそしてカカシとのツーマンセルの任務から暫く経った頃、待機所で毎日上司が読む新聞を隣から覗き込む。

「そういやツキ、この前ミナト班を助けたらしいじゃねぇか。上層部にも報告がいってたらしいぜ。」

その言葉にぱちぱちと瞬きをすれば静かに首を振る。

『いえ、確かに援護はしましたが…仲間として当然のことをした迄ですよ。』

「はっはっは、相変わらずお堅いねぇツキは。もう少し手放しに喜んでもいいんじゃねぇか?」

ツキの返答にげらげらと豪快に笑えば、次の任務があるのかひらりと手を振って待機所から出ていった。

それと同時に、こつこつと待機所の窓を叩く音が聞こえる。

そこには忍鳥が止まっており、足には一枚の紙。

『お呼び出しですか。』

口の中の団子を飲み込めばゴミをぽい、とゴミ袋に放り投げ火影室へ向かった。

思えばミナトが火影になってからここに来るのは久しぶりだった。ミナトと会わない間に、うちはオビトやのはらリンの殉職を耳にしていた。カカシは大丈夫だろうかと、ふと思いを巡らす。



『失礼します。ツキです。』

「ああ、急に呼び出して悪かったね。今日はちょっと会ってもらいたい人がいるんだ。」

会ってもらいたい人、という言葉に不思議そうに首を傾げると、秘書室のドアから誰かが入ってくる。

「今日から暗部に配属になった銀狼だ。」

見覚えのある銀色の髪や面から微かに覗く赤い瞳が、目の前にいる四代目の部下を思い出させる。

『…もしかしてあなた、』

そう言いかけたツキに、銀狼は静かに頷く。

「ま、そういうことだから。ツキ、君に銀狼の教育係をお願いしたいんだけど…歳も近いし気兼ねなく話せるかなと思ってね。」

いい?と首を傾げるミナトにツキは小さく頷いた。



火影室を出ると、銀狼がこちらに手を差し伸べた。

「これからよろしく頼むよ。」

ツキは素直にその手を握れば、はい、と短く返事をし、二人は暗部の待機所へ向かった。


待機所に着くと給湯室の使い方や休憩室を案内する。

すれ違う暗部の人間にも簡単に自己紹介をして回った。

今日は比較的平和なようで、待機所内をうろうろとする暗部の姿が多く見られた。

「任務が無い時は非番のようなものか?」

カカシは出されたお茶を飲みながら首を傾げる。

『はい。それぞれ家の掃除をしたりのんびりしたりしていますよ。私は欠員がある班に駆り出されたりしますけど。』

あはは、と遠い目をするツキにそっと心の中で手を合わせる。

『今日は皆さん特に任務はないみたいですね。待機所にこんなに人がいるのも珍しいです。』

辺りを見渡しそう告げる。暗部は通常部隊よりも常に死と隣り合わせ。へらへらと楽しそうに談笑するここにいる人達も、任務となれば顔が変わる。その様子を想像しては、鳥肌が立つのをカカシは覚えた。


ずず、とお茶を飲みながらカカシはふと疑問を思い出した。

「そういえば、初めて会った日に張ってくれた結界って…あの、チャクラの回復とか怪我の治癒とか。」

ぽん、と思い出したようにツキは手を叩く。そういえば説明してなかったなぁ、とおもいながら。

『うちの一族は元々結界術に優れた家系だったんですよ。家にある巻物を読み漁ってたら色々な結界を覚えてました。医療忍術とはまた別です。』

掌にぽん、と小さな結界を作れば『指を入れてみてください』とカカシの方へ突き出す。

「…暖かいな。」

人差し指を入れたカカシは素直に感想を告げる。

『これは私のチャクラが濃縮された結界です。この中にいるとなんだか体が回復するみたいで。』

見つけたのはついこの間なんですけど、と笑う。

「じゃあお前は医療忍術は使えないのね。」

『今勉強中です。軽い怪我なら治せるようになりました。』

このやりとりにほう、と考える。どこまでも実力の底が見えない女だな、とツキを横目で見れば不思議そうに首を傾げる。

「…いや、何でもない。」

沈黙に耐えられなくなったカカシがそう言うと同時に、

コツコツ

忍鳥が窓を叩いた。

『…任務のようですね。』

二人は静かに立ち上がると火影室へ向かった。

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