「誰にもあげない、俺のだから」
「なまえさんと黒尾さんって付き合ってるんですか?」
梟谷学園グループの合宿中。
烏野の日向くんにそう聞かれて私は苦笑い。
「それ田中くんと西谷くんにも聞かれた。でも違うよ」
「そうなんですか!?俺、仲良いから付き合ってるのかと思ってました」
「幼馴染ってだけだよ。それにあいつはああやってからかってるだけ」
私とクロと研磨は幼馴染。
昔からいつも三人一緒で、自然の流れで三人とも同じ高校に入り、同じ部活に入った。
「からかってる?」
「うん、研磨をね」
日向くんは、わけがわからない、という風に首を傾げていたが、影山くんに呼ばれそっちへと走っていった。
「なまえ…」
「っわ!びっくりした…」
後ろに気配を消して立っていたのは研磨。
なんだか少し怒った顔をしている。
「どったの?」
「またクロと付き合ってるって言われたの?」
「え…ん、そう。クロがベタベタしてくるから勘違いしちゃう人が多いみたい」
クロはいつも後ろから抱きついてきたり、頭を撫でたり、頬にキスしてきたりするのだ。
そりゃ勘違いだってされる。
やめろと言っても聞いてはくれない。
「…研磨?」
黙って俯いてしまった研磨の顔を覗き込む。
「なまえは俺のなのに」
あら、珍しくヤキモチやいてる。
「あたりまえじゃない。私は研磨のものだよ?」
すると研磨は私の腕を取り、体育館から連れ出すと、所謂壁ドンの体制へともっていかれた。
「……っ!?」
それから研磨は私の首元にかぷりと優しく噛み付いた。
驚きのあまり逃れようとするが研磨の膝が私の足の間に入って、壁に縫い付けられている状態になっているためそれは叶わない。
「けんま…ちょっと…っ」
何度も何度も噛み付かれ、痛くはないけれど少しだけチクリとした。
「これなら…俺のって、わかる」
おそらく首にはキスマークや噛み付いた跡が残っているのだろう。
研磨は私の首を撫で、満足そうに笑った。
「もう…ホント猫みたいなんだから」
俺の、ってマーキングする猫と一緒。
「なまえは誰にもあげない…よ?」
うん、これからも貴方だけの私でいさせてね。
「誰にもあげない、俺のだから」
(クロにちょっとだけ感謝かも…)
あとがき
研磨がヤキモチをやいてるところを見るのが楽しくて、いつもわざとなまえにくっついていたクロでした。
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