願掛けってやつですか?
影山…がんばって……。
心の中で必死に応援する。
影山は日本代表の一員として活躍していて、もう高校時代のようにマネージャーとして声をかけることは出来ない。
私ができるのは、こうやってお客さんに混ざって、応援することだけ。
影山には来るというのは伝えていない。
恥ずかしがり屋の影山が、気にしてしまってはいけないから。
「さぁ次は影山選手のサーブです。いつも素晴らしいサーブを打つ影山選手ですが、今日はあまり調子が良くないように思えますねー」
実況の人がそんなことを言う。
影山…落ち着いて。頑張れ…。
指を組んで、何度も呟いた。
影山はボールを受け取ると、深呼吸をして、
首の辺りで何かを強く握った。
なんだろう。そう思った瞬間、気付いた。
……私とお揃いの指輪だ。
指輪をネックレスに通して首から下げていた。
『影山なんで指輪つけないの?』
『…チームのやつらにからかわれる』
なんて言ってて、恥ずかしいからってつけてくれなかったのに…。
馬鹿……。
影山はサービスエースを決めて、小さくガッツポーズ。
実況の人もサーブを打つ前のその動作に気がついたのか、
「影山選手、サーブの前にネックレスを強く握りましたねぇ」
「ですね。大切なものなのでしょうかね」
なんて言ってて。
試合が終わって、私は家に帰った。
ふと携帯を見ると、ものすごい数のLINE。
とりあえず一番上にあったスガさんのLINEを開いた。
「テレビを見ろ…?なにそれ」
よくわからないまま、とりあえずテレビをつけたらちょうど今日の試合のインタビューの様子が流れていた。
試合が終わったあとも、ネックレスの件についてコメントを求められたようで、影山はファンも多いから、記者に囲まれている。
「サーブの前に必ずネックレスを握りますよね?何か意味があるんですか?」
「あ!それあれだ!なまえとの、」
「日向ボケェ!横から出てくんな!」
その瞬間、記者達が前のめりになる。
「なまえさん?とは!?どなたですか!?」
「日向選手ともお知り合いの方なんですか?」
「影山選手の恋人なんですか!?」
「日向選手!なまえさん、とは!?」
テレビの向こうは大騒ぎ。
私は呆然としたあと、みんなからのLINEの意味を知った。
まさか日向がバラすとは…。
私はもう可笑しくなって、一人で笑ってしまった。
日向ってば高校のときから何も変わってない。
とりあえず影山が帰ってきたら、馬鹿にしてやろう。
きっと影山は、顔を真っ赤にして拗ねると思う。
そしたら、
「おつかれさま」
って抱きしめてあげよう。
願掛けってやつですか?
(「影山!おかえりなさい!!」)
あとがき
少し未来のお話でした。
最近三次元の男子バレーにもハマっております。
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