▼ 3話
刹那赤い何かが飛び散った。
ただ、その赤い何かは少女ではなく先程まで刃物を持っていた人物のものだった。その赤い何かは私の方にも飛んできた。
私の手には先程まで
「キャハ───キャハハハハ」
口から溢れたのは笑い声だった。
自己防衛だとしてもそれはいけないことだと言うことは幼い彼女にも理解できた。
ただ、不思議なくらい罪悪感は無かった。
今までには感じたこともない程の快感、快楽、享楽、そのようなものを感じていた。
「…さーてとっ、これどーしようか」
気を紛らわすために明るく声をあげた。
ポツリ、ポツリと雨が降ってきた。
花壇の近くにもう鳥はいなかった。
そして始めに戻る。
後ろから水溜りの中を歩く音が聞こえてきた。
ピシャリ、ピシャリ
誰かが来る。
眼鏡をかけてスーツをかっこよく(?)着こなす眼鏡のお兄さんがこちらに近づいてきた。そして私の前で立ち止まりそこの 人だったもの に目を向けたあと私の方を向いた。彼は驚いたような嬉しそうな、良く分からない表情をしていた。あれだ、子供が新しい玩具を与えられた時の表情のような…そんな感じ。
彼は私に安心させるように一言声を掛けるとこう言った。
「私の妹にならないか」と
これが《自殺志願》と後の《吊られる蜘蛛》の出会いだった。
prev / next