▼ 2話
私はブランコが好きだ。
グラリグラリと不安定に揺れる感覚が私は好きだった。不安定に揺れる感覚が好き、というよりも予測できない不安定さが好きだった。
そろそろ家族が心配する頃だろうと思い、ブランコから降りて公園を出たところで少女は人だった塊を見た。
そこに広がる世界は本来なら彼女が見ることも無い世界だった。
これ以上は駄目だと少女の中で警報が鳴り響く。だが彼女の好奇心は高かった。
少女はそれ、人だった塊に近づいていく。
それを見た瞬間、よく分からない感情が少女の中でこみ上げてきた。
「わぁ…」
恐怖?驚き?悲しみ?怒り?これは違う。これは…。
少女の感情を知れば10人中9人は
後ろから厳つい声が聞こえてきた。誰かに呼びかけているようだった。
「おい、餓鬼ィ…見たなぁ?」
その呼びかけている誰かは私だった。
あらら、これはやばいかも
どこか他人事で、相手が刃物を取り出しても少女にとってそれは他人事であった。
あぁ、ここで死ぬんだな。
少女、鶴見沙織はどこまでも危機感というものを持っていなかった。
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