「誰かの・・”声”?」
口には出していなかったけど私には彼女の言いたいことが分かった。
「あの時何も聞こえなかった。誰かの声・・だなんてきっと空耳なんだろうけど。」
だけど彼女の顔を見たら、誰かの声は空耳じゃないと思ってしまった。
苦しそうな顔をしていたから。
―――
「珠紀!ゆきいるか?」
「どうしたの拓磨。」
「まぁお前でもいいか。
写真部に薄桜の奴が何人か入るってよ!」
「ほんと?」
「ああ。早くゆき見つけて伝えないとな。」
「うん。」
彼女の顔がまだ頭から離れないまま、
私は彼女に伝えるべく探し始めた。
―――
”薄桜大学生が写真部に入る。”
それを聞いたらきっと彼女はとても嬉しがるに違いない。
そう思っていた。
「あ、ゆきちゃ、」
廊下の曲がり角。
やっと彼女を見つけて声を出した時、
「君、写真部の人なんだよね?」
1人の男子学生が彼女のすぐ側にいた。
「そうですけど。」
その時は知らなかった。
彼女がこれからどんな経験をするのかなんて。
2011/07/18
前 ←→次