「あと、少し。」
「ん?」
「あ、原田さん。稽古終わったんですか?」
「あぁ。で、なにが『あと少し』なんだ?」
「さっき調べてたんですけどね。」
そう言うと少年は指をくるくると回し、光の玉を浮かばせる。
「あと少しで新入りさんが来るんです。」
「”新入り”?近藤さんが言ってた若いガキのことか?」
「はい。」
「どんな奴なんだ?」
「いや、それはわかんないですけど。でも僕より年下なんです。」
にこにこと嬉しそうに笑う少年。
それを見た青年は苦笑した。
―――
「・・・。」
目を覚ますと薬品の匂いが微かに香り、保健室にいるのだとわかった。
「あ。起きたか?」
「”原田さん”・・。」
「?!」
側に人の気配を感じた。
だんだんとはっきりしてきた意識をそちらに向けると、その気配の主は先程自己紹介をした原田左之助だった。
「あれ、今わたし、」
「無理すんな。今は寝てろ。」
「でも、わたし・・今、」
”左之先輩を原田さんって。”
そう言おうとしたのだけれど。 左之先輩に起き上がりかけた身体を元に戻されてしまって。
私が”原田さん”と呼んだ時、彼もまたびっくりしていて。
なにがどうして・・・混乱してしまったので私はまた眠りについた。
「今のはなんだ。・・・”原田さん”ってなんだよ。」
彼もまた悩んだ、なんて私は知らなかった。
――
「こんにちはー!」
「!」
「この声・・新入りですね。」
しばらく原田さんと話していると、予想通り新入りさんの声が聞こえた。
どんな人なのか知りたくて、声のする方へ向かおうとしたのだけれど、
「蒼井。仕事が入った。」
「えぇ?!」
「今すぐ行ってこい。」
「ひ、ひどいや・・。」
「はは。蒼井頑張ってこい。」
土方さんから仕事を任されてしまったので新入りさんとはその日会えなかった。
そしてしばらく日が経って、
「今日も仕g「嫌だ!今日は絶対新入りさんに会ってきます!それじゃあ!」
何故か一度も新入りさんに会わなかったので、今日こそはと思い、土方さんと会うなり僕は逃げた。
「うーん。どこにいるのだろう。しかし中で探すと土方さんに・・」
きょろきょろと門の近くでうろついていた。
「どうかしたのか、お前。」
突然、声を掛けられた。
「ええ?!・・・あー、気にないで下さい。」
振り向いて顔を見ると、 あ。この子が新入りかな?
「いやいや、見るからにお前怪しいだろ。」
もう顔を見たから用は済んだ。あとはどうやって土方さんに見つからずに・・
「誰に用?」
な、なんだ?この子しつこいぞ!
「えーと、「お!お前ここにいたのか!」
困っていると原田さんが現れた。
「あ、原田さん。あの、やっぱり土方さん「怒ってるな。」・・ですよねー。」
原田さんと話していると、それを新入りさんもとい藤堂くんが不思議そうに僕を見た。
「ちょっとちょっと!幹部を「さん」付けなんてソイツ何者?」
「・・・あ、そっか!僕、その時いなかったんですね。
初めまして藤堂くん。僕は4番組組長の蒼井ゆきです。」
「よ、4番組組長ー!?」
その顔はなんだ。その不服そうな顔は。
藤堂くんはまだ信じられない!という顔をしていた。
だから言ってやったんだ。
「僕、今日まで最年少だったんだ!」
「”今日まで”?」
「今日から君が最年少!!」
「その言い方ひどくね?」
2011/08/18
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