<プルルル、>
しんと静まった部室で私は一枚の紙と向かいあいながら携帯を手に持った。
≪もしもし。≫
「あ、もしもし。原田さんですか?」
≪ああ。そうだが。≫
「写真部部長の蒼井ゆきと言います。明日の午後、部員の顔合わせをしたいと思うんですが空いてますか?」
≪ん。・・明日の午後か?・・・。ああ、空いてる。≫
「そうですか。では明日の午後1時に部室に来てください。」
≪ああ、ありがとな。≫
「それじゃあ。」
<ツー、ツー>
―――――
次の日の午後12時30分、約束の30分前の時刻。
「まだなのかー?」
「真弘先輩うるさい。」
「んだよ。この俺様がわざわざきt「真弘うるさい。」
「なんだよ祐一!」
今日の顔合わせの為にわざわざ4年生の先輩が来てくれた。
4年はすでに部活は引退しているのに来てくれて本当にうれs「いつ来るんだ?」・・いや、一人はいらないな。
4年は鴉取真弘、弧邑祐一の2人である。
<ガチャ>
「「「!」」」
「失礼しまーす。」
そんな2人含めて騒いでいると、ゆっくりと部室のドアが開いた。
そのドアからひょっこりと顔を出したのは、あの時の少女だった。
「”雪村”さん?」
「は、はい。」
まさか個性豊かな(もちろん私と珠紀ちゃん以外の人のことだ)人々に迎えられるなんて思っていなかったんだろう。
私が声を掛ける前から既に彼女は困惑していた。
「千鶴。早く中に入れよ。」
いまだ困惑している彼女の背をそっと押しながら入ってきたのはあの時の少年 ではなく、確か”雪村さん”を妹のように溺愛していると言われている、
「”南雲”くんだね?」
「はい、そうです。」
”南雲くん”は”雪村さん”と顔がそっくりでまるで双子のようだ。しかし名字が違うのにここまで似るものなのか。
きょろきょろと周りを見る”雪村さん”と違って、”南雲くん”は落ち着いている。
「2人とも双子みたいだね。」
素朴な疑問とともに口から出てきた言葉。
それを聞いた瞬間”南雲くん”の目つきは鋭くなった。
「蒼井・・先輩でしたよね?先輩はご存じないんですか?」
その声はひどく冷たく、周りの温度が5度くらい下がったように思えた。
けれど私は知らない。一体何のことなのかさっぱり分からないのだ。だから、何を?と聞こうとした その時、
<ガチャ、>
「ったく平助のせいだぞ?」
「わ、わかってるよ。」
再び部室のドアが開いて2人の声が聞こえた。
「遅くなってすまな・・って、千鶴と南雲?」
「なんだ。千鶴の言ってた知り合いってのは原田と藤堂のことか。」
「ええ?!薫も?」
「なんだよ藤堂。文句でもあるのか?」
「威嚇すんなよ南雲。それより部長さんはどちらさんだ?」
赤い髪の毛の彼――原田さんは私と珠紀を見る。
「私です。」
「おお、そうか。知ってると思うけど俺は「俺はあんたを認めたくないね。」
「え?」
「それじゃあ俺は先に失礼するよ。」
<バタン、>
「か、薫!」
南雲くんは冷たい視線を私に向けると踵を返して出て行ってしまった。
雪村さんも彼を追って出て行った。
「・・・。」
「南雲と何かあったのか?」
再び温度の下がった部室で私に声を掛けたのは原田さんだった。
2011/08/11
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