未来への魔法 | ナノ
上司の行方


少年の上司はそれは変わった人だった。

少年より歳は上なのに子どもっぽく、
大人らしく冷静であるかと思えば不機嫌になったり機嫌が変わりやすく、
冗談であるのかと思えば本気であったり。

だから少年は上司に対して遠慮はしなかった。
そんなことができたのも少年が「組長補佐」という立場であったのが一番の理由だろう。


「蒼井。夕食後に副長の元へ行ってくれ。話したいことがあるそうだ。」

「分かりました。」


ある日の夕食時。
上司といつも行動している、上司と同じ立場の「組長」に声を掛けられた。
彼は3番組の組長である。
いつも物静かで落ち着いていて、真面目な人だ。
上司とは正反対である。


「副長の呼び出しかー。お前何やったんだ?」


他人事のように話している彼もまた「組長」。
彼は8番組組長で、最年少の幹部だ。
若いせいか彼はいつも元気である。


「お前じゃねぇんだ。蒼井が失敗しでかす訳ねぇだろ。」


すかさず話すのは10番組組長。
彼は他の人と違い、特有の赤い髪を持っている。
短気であるが人をよく見ていて、気が利く人だ。

先程から「組長」がやたらいるのは、少年が組長たちと食事をしているからである。
本来「組長補佐」であったとしても「組長」と食事をすることはない。
しかし少年には理由があったのだ。


<バン、>

「組長!蒼井”組長”!」

「なんだなんだぁ?今は食事中だむぐっ、」


2番組組長の口を10番組組長が手で抑える。


「・・・。何が起きましたか?」

「そ、それが・・・」


少年の今の立場は「組長」なのだ。
しかし正式には「”代理”組長」。


「悪いな、俺が頼んだんだ。」


その声の主は、少年と同じ組の隊士の後ろに立っていた。


「副長が?」

「ああ。実はな――」


彼はこの組長・隊士をまとめる組織――「新選組」の副長。


「――総司がいなくなった。」



上司の行方
(少年は1番組組長補佐”だった”)
(彼の上司の名は沖田総司)


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