未来への魔法 | ナノ
時間が止まった気がした
知らなかった、気付かなかった。
いや、知っていた、気付いていた。
ただ信じたくなかった。
「嘘だ嘘だ!なんで、なんでっ。」
「沖田さん、俺が分かりますか?返事をして下さい。」
「・・ん、うるさいよ山崎君。」
山崎君の腕に寄りかかる彼。
話す度に口元が赤く、赤く・・・
「どうして?刀は使ってないのに。」
そう、2人の手元には刀がない。
それなのに2人して倒れ、沖田さんは血を吐いて、薫のマントは血で染まっている。
「殴り合いをしたんだよ。でも僕、吐血してね。
そしたら薫がマントで血を拭くからおもいっきり殴ってやった。」
”吐血”。その言葉が僕の心にグサリと刺さる。
僕はもう現実を受け止めなくてはいけないのか。
知らない「振り」も終わらせなくてはいけないのか。
「あと、どの位なんですか。」
「え?」
「!」
僕は泣かない、同情だってしない。
あなたはいつもの「組長」であるのに変わりはしないのだから。
「組長に残された時間はあとどの位ですか?」
時間が止まった気がした
(僕の声が震えていた、と)
(山崎君が言っていた)
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