05:ひとりぼっち
体育館の後ろの隅っこで座って目を瞑っていても分かる視線に少し苛ついていると此方に向かって来る足音が聞こえた。
「名前ちゃん、ステージの方に来てくれる?赤司君が呼んでるの」
『分かった』
誰だよ赤司君って…まあ、中央のステージに集まっているあの中の威圧感出してる赤毛の奴か。
それにしても男に囲まれるなんて嫌なのに。
そんな事を考えながらステージに上れば鋭い視線の数々に溜め息をつく。
「単刀直入に言おう、貴女は何者だ?」
『いきなりか。それは私の方が知りたいな…私は苗字名前、芙蓉女子学園高校1年』
「貴女が俺達を連れてきたのか?」
『連れて来た覚えはない。私も目が覚めたら教室の床で寝ていた』
こんな状況だし人を疑いたくなるのは分かるが皆の視線が痛くて重苦しくて嫌になる。
『…怪しい者を排除したいって思っているようだし、私は此処から立ち去りましょうか』
「…」
「ま、待って名前ちゃん!!一人じゃ危ないよ!!」
『ありがとう…さつきちゃん私は大丈夫だよ』
ステージから下りて体育館のドアに手を掛ける。
すると大きな影が出来たので不思議に思い後ろを振り返ると紫の髪の巨人が立っていた。
「ねぇ、出て行く前にお菓子持ってない〜?」
『お菓子…?』
間延びのした気だるそうな話し方をする紫の巨人君の言葉に内心驚きつつ上着のポケットに手をいれる。
すると固い感触を感じて手に掴み広げれば飴が3個あった。
「飴!!」
『ん、あげる』
「アツシ!!」
キラキラと目を輝かせている巨人君の後ろから声が聞こえたがそんな声など聞こえてないのか巨人君は飴を手に取り口の中に入れた。
『…毒でも入ってたらどうするのよ』
「その時は口から出すからへーき」
緊張感のない巨人君から目を反らして体育館を出た。
2020.6.26.
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