「…はい、終了。プリントを裏にして回してください」

合宿が始まったその夜。その時から勉強は始まった。長い時間、机に向かった。
最後の小テストを、回収して今日の勉強会は終了となった。

「今日はここまで、明日は六時起床投稿するまでの1時間、答案の質疑応答やります。」
「ちょ…ちょっとボク夜風にあたってくる」
「おう冷やしてこい…」

一日目でオーバーヒート寸前まで追い込まれた燐は、フラフラとしながら夜風にあたりに外へと向かった。
私はと言えば、勉強には集中するために何とか意識を留めていたが、それが終われば、また違うことを考え始めていた。

希望称号はもう提出したけど、私はほんとにやって行けるの?周りの子達はみんな何かしら目的を持ってここに来ているようなのに、私と言えば自分の身を守るためだけなんて……。
燐や勝呂くんはサタンを倒すと言っている。
三輪くんや志摩くん、神木さん達だってきっと何かあるはずなのに……。
それも、力があるならまだしも、私にはまだ扱いきれない使い魔と来た…。
もし、もしもいざという時役に立たなかったら私はここにいる意味を見失いそうだ…。

小さくため息をついたその時、隣から朴さんが私をつつく。

「結崎さん。」
「…どうしたの?」

それに、首をかしげて答えれば、ニッコリと笑って朴さんは続ける。

「つかれたね。お風呂行こうよ!」
「うーん…」

誘いは嬉しいが、もう少し動ける気がしない。
断ろうか迷っていると神木さんが近づいてきて、楽しそうに話しかける。

「朴、お風呂入りに行こ!」
「うん…。」
「お風呂!私も!」

朴さんだけにかけられた声に朴さんが答えれば近くで杜山さんも声を上げた。
これは、行かない方がいいかなと思っていれば少し表情を変えて、神木さんが私を見る。

「あんた、どうするのよ。」
「え、わ、私?」
「他に誰がいるっていうの。」

いきなり掛けられた声に私は驚き問いかければ、少しイラついたように言う神木さん。
まさか、彼女から声がかかるとは思ってもいなかったので、驚きを隠せないが、やはり動ける気がしないので少し笑って答える。

「うーん。私は、もう少しここで休んでるよ。疲れちゃった。朴さん、神木さん。お誘いありがとう。3人で入ってきて。」

神木さんは少しまゆを寄せてから、あっそと言って、朴さんは何やら心配そうに私を見ている。
しかし、そのまま神木さんが歩き出したので、朴さんもじゃあね、と言って3人で行ってしまった。
それを見届けると、ぐでーっと机に伸びる私はまたため息をついた。

「うはは、女子風呂か〜ええな〜こら覗いとかなあかんのやないですかね。合宿ってそういうお楽しみ付きもんでしょ」
「志摩!!お前仮にも坊主やろ!」

なんとも、聞き捨てならない詞を吐く志摩くんを咎めるように、勝呂くんの声が聞こえる。
それを、気にもせずつづける志摩くん。

「そんなん言うて2人とも興味あるくせに〜〜」
「また志摩さんの悪いクセや。」

その言葉に三輪くんは呆れ声で言う。

「…一応ここに教師がいるのをお忘れなく」

ふと、入る牽制の声に皆の視線がそちらを向く。
私も顔を上げてそちらを見れば雪男くんのようだ。
しばしの沈黙。
しかし、それを破るのは志摩くんで、ニヤリと笑って雪男くんの肩に手を置いた。

「教師いうたってアンタ結局高一やろ?無理しなはんな?」
「僕は無謀な冒険はしない主義なんで」

男の子って楽しそうだなぁ。と、思いながら私は口を開いた。

「……じゃあ、無謀じゃなきゃするんですねー。それより志摩くん、女子の前でよく堂々と話が出来るね。尊敬するよー。」

あははは、と笑えば、雪男くんはピシッと一瞬固まり、志摩くんは全く気にせずこちらを向いた。
勝呂くんと三輪くんは苦笑いと呆れが混じった顔をしていた。

「あれ?伊織ちゃんおったん?行かへんのー?」
「もう少しここで休暇です。それに、あんな話聞いたら安心してお風呂なんて入れませーん。」
「そんなー。みんなで、仲良う入ってきたやええやん。」

そう言った志摩くんに、淡々と答えるが志摩くんはなお言う。
まず、覗くなんてこと話した後に安心して入れる人はそうそういないと思う。
しかし、ずっとここにいる訳にもいかず、立ち上がって伸びをする。
そして、歩き出そうとした時だった。

「きゃああああああああ」

その声に弾かれるようにして扉の方を向く4人は、一度顔を見合わせると、全員が勢いよく駆け出した。

「今のって神木さんと、朴さんやないですか?」
「じゃあ、お風呂場だね。」

三輪くんに私が答える。
すると、先に行きますと、雪男くんが先を走っていく。

そして、たどり着いた時に大きなガラスの割る音を聞いた。中では朴さんが倒れており杜山さんが治療をしてくれていた。

「朴さん!」
「結崎さん…」
「っ!」

その痛々しい姿を見た時に先ほどの自分を呪いたくなった。もし、あの時一緒に来ていれば、彼女をこんな目に遭わせずに済んだかもしれないのに。
そう思って、下を向いていれば、朴さんは少し笑った。

「どうして…結崎さんが…泣きそうなの?」
「だって、私が来てればもしかしたら…」
「ふふ、結崎さん…ありがとう。そう思ってくれてるだけで……うれしいよ。」
「朴さん……」

優しく笑いかけてくれる彼女に、私はまたキュッと胸が締め付けられる。
ありがとうなんて、私は何もしてないのに…。

私は彼女の顔をまっすぐと見ることが出来なかった。


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