bookシリーズ | ナノ


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あ…………やっちゃった。

これ、どう見ても"砂糖"っていう字だよね。

塩、じゃない………よね…。

あー。どうしよう。どうしよう。

豆腐とねぎに、砂糖って……合う?

合うわけないよね…?

どう考えてもミスマッチだよね?

何か奇跡が起こらない限り、これは紛れもなく砂糖漬けのお味噌汁だよね。

ああどうしよう。

もう土方さん、起きちゃうのに。

どうしよう。


ガチャ。

あっ―――


「お早う、総司」


あーあ。


「おはよございます……」

「総司が俺より先に起きるなんて、天変地異か?」

「あ…いえ………」

「ん?……おめぇ一体何してたんだ?」

「それより土方さん、もうすこーし寝ててもいいですよ」

「あ?」

「ていうか二度寝大歓迎なんですけど。無理やりでも目を閉じて寝てくれというか」

「何で…」

「わかりましたか?わかりましたよね?はい、わかったらさっさと二度寝しに行ってください」


ぐいぐい。

土方さんを押しやった。

あれ――

なんか手首捕まれちゃったんですけど。

な に こ れ。


「何隠してんだよ」

「え……べ、別にー?」

「嘘つけ。じゃあこの妙な匂いはなんだ」


匂い……?

あー!

僕、火を消してないような気がするような。


「やばっ!」


うん、やっぱり消えてなかった。

沸騰して煮え立ってるよ、この砂糖汁。

益々砂糖の濃度が増しちゃったんじゃない?これ。


「なんだ?……これ」


あーもう土方さん見ないで!

今すぐ寝落ちて!夢だと思って!


「総司……もしかして、朝食を作ってたのか?」

「あー、まあそんな感じです。ニュアンスはそんな感じです。休日だし、なんか、こう……喜ばせようと思ったんです、よ」


土方さんが驚いたような顔をしてる。

まぁ、喜ばせたかったんだけど、ね。


「でも……現実はそう甘くありませんでした、ちゃんちゃん。ていうお話です」


あーあ。

せっかく喜ばせようと思ったのに。

残念無念。


「ほぉ………で、何をやらかしたんだ?」


土方さんが、乱雑に散らかされたキッチンを見渡している。

だから!見 な い で!


「僕は何もしてません。白くてさらさらしてる粉を入れただけです」


不気味に湯気を上げているお鍋を覗き込みながら、土方さんが鼻で笑った。

……な!失礼な!

そりゃ120%僕が悪いかもしれないけど、そして土方さんは料理だって何だって器用にこなすかもしれないけど、不器用なとこも僕の可愛らしさでしょ!!!


「で?味見はしたのか?」

「味見?……そんな勇気ありません」


鍋の中身、どうしようかな。

捨てる?植物にかける?近所の野良猫にあげる?あ、近所の騒音おばさんにあげようか。

ていうか土方さん!スプーンなんか取り出して何してるの!


「どんなもんでも美味しくなる方法、教えてやるよ」


え?そんなのあるの?

いや、でも待って!口に含まないで―――!

ちゅ

あ れ?

土方さんの、唇……

わ!なんか変な液体が流れ込んできた!

やだやだ絶対不味い!

断じて飲み込むものか。

必死に土方さんを押してみる。

……びくともしない。

でも……………甘い……

土方さんの、熱いキスが。

とろけてしまうほど、甘い。

いつの間にか、侵入してくる土方さんの舌に応えようと必死になっていた。

ごっくん

え?!何?何今の効果音!

まさか喉が上下した音じゃないよね?

誰か!嘘って言って!


「んぅ――――っ!!!」


土方さんの唇が、名残惜しそうにゆっくりと離れた。

唾液とあの変な液体が混ざって、僕と土方さんの間に糸を引いている。


「…っは、御馳走様」


ん?待って待って。

土方さん、結局飲んでないじゃない!

全部僕に流し込んで、自分は全く飲み込んでないじゃないか!


「どうだった。不味かったか?」

「〜〜〜〜っ!」


何ニヤニヤ笑ってるのさ!


「俺は、すごく美味かった」

「っそりゃあ土方さんは一滴たりとも飲んでませんからね!!卑怯者!」

「そうは言っても、おめぇ、自分で作ったもんには責任持てよ」


ズルいズルいズルいズルい!


「で、どうだったんだよ。美味かったのか?」


うーん。

意外と吐き出したくなる感じじゃなかった。

というか、あまりわからなかった。


「おいしかったです、よ……キスが」


あ、またニヤニヤしてる!!

絶対よからぬことを企んでる!


「じゃ、残らず食べさせてもらうよ」

「は…?何言って…」

「せっかく俺のために朝食を作るなんていう可愛いことをしてくれたんだしな」


いや、それは失敗に終わって……


「だから遠慮なくいただくよ…お前を」

「ええぇ!何?何ですかその脈絡のない展開!」

「…拒否はしないんだな」

「いっ……!」


そうして、怪我の功名というか何というか、僕はまた土方さんによってベッドへと連れ戻されたのだった。

ちゃんちゃん。






総司の十八番は「あ、調味料間違えちゃった」だと思う。




*maetoptsugi#




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