僕、ここで何してるんだろ....
真っ青な空を眺めながら思った。
人は悲しいことがあると、空を見上げるんだってさ。
そうなのかな。
友達付き合いとか煩わしくて一匹狼なことが多いけど、たまには寂しくなったりもする。
だからといって頼れる相手もいない。
ほらね。結局僕は一人なんだよ。
こうやってぼけーっと空を見てるのが、一番楽。
……それなのに。全くなんで来るかなあ。
「サボんじゃねぇ」
「先生こそ」
「俺は今の時間は空いてんだよ」
「邪魔なんですよ、折角寛いでたのに。どっか行ってください」
「俺だって貴重な休憩時間なんだよ。大体、ここにいちゃいけねぇのはお前の方だろうが」
「いいんです。どうせ教室にいたって寝てるだけだから」
「そうかよ」
別に何を話すわけでもない。
かと言って、教室に戻れとがみがみ怒るわけでもない。
ただ、寝っ転がる僕の傍に座って、おんなじように空を眺めてるだけ。
「……なーに考えてるのかなー」
生徒のサボりを容認するなんて、教師として失格なんじゃないの。
でも、居心地は悪くない。
時々鼻を掠める煙草の香りとか、インスタントコーヒーの香りとか、妙に落ち着く。
……のがまた癪に触るんだけどね。
「今日の空はやけに青いな」
不意に呟く貴方の横顔をちらりと見て、その顔色を伺って。
遠い目をしているなと思った。
今、その頭の中にあるのは何?
心を占めているのは、誰?
悔しいほどに、そんなことばかり気になるけど。
それは、僕の知り及ぶところじゃない。
「人は悲しいことがあると、空を見上げるらしいですよ?」
「なんだそれ」
「ん、何かの詩で読みました」
「お前が詩?」
「そんなこと言ったら、先生が俳句?」
「うるせえ」
「悲しいこと、あったんですか?」
「…何だっていいだろ」
「へぇ…あったんだ」
「お前こそあったんだろ」
「まぁね。先生は?彼女にフられたとか?」
「んなわけあるか」
「……否定しないんだ」
「は?」
彼女、いるんだ。
ずきん。
ま、当たり前か。無駄にいけめんだもんね。
「それでおセンチになってるんですか?」
「おセンチって…」
「彼女さん、かわいい?」
「だから、何でそういうことを聞くんだよ」
「うーん、先生を好きになるなんて、物好きだなーと思って」
「うるせえよ」
否定も肯定もしなかったけれど、何となく答えはわかった。
悲しいことがあると空を見上げる、か。
抜けるような青い空を見上げながら、わからなくもないかな、と思った。
後で先生には彼女はいないけど好きな人がいるってことを知って、僕はまた悶々することになるんだけど、それはまた別の話。
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