――あれ、それだぁれ?
手帳の間から滑り落ちた一枚の写真。
僕が止める間もなく拾われた。
――ねぇ、これ誰なの?
知らない人だよ。
僕は答える。
――嘘。知らないわけないじゃない。
知らないよ、そんな人。
――総司は、知らない人と一緒にどこかへ出かけて、一緒に写真を取って、ピースまでして、その写真をいつも持ち歩いてるの?
うるさいなぁ。
僕が写真を取り上げようとすると、上手くかわされてしまった。
無理やり奪って折れたり破れたりしたら嫌だから、素直に諦める。
そして小さく呟いた。
昔知ってた人だよ。
――やっぱり知ってるんじゃない。
ううん。今はもう忘れたんだ。
――この人、総司の何だったの?
忘れちゃったから覚えてない。
――これってどこで撮ったの?
海浜公園。
甘酸っぱいというよりも、苦いだけでしかない思い出。
――そんなに覚えてるのに、どうして忘れたなんていうの?
うるさいよ、ほんと。
――よくわかんないけど、きっと特別な人だったんだね。
決して、抉られたくない古傷。
人には、触れてほしくない過去だってある。
――大切な人だから、写真持ち歩いてるんでしょ?
そうかもね、でも君には関係ないよ。
僕は写真を引ったくった。
写真の中の僕は、幸せそうな顔をしていた。
こんな風に笑えていた日もあったんだな。
……でも、もう過去の話だ。
何で持ち歩いてるかって、そんなの。
いつまでたっても忘れられないからに決まってるじゃないか。
×沖田でも沖田×でもいけるお話。
総司はずっと忘れられない子。
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