校舎から外に出てみたら、ざーざー降りの雨だった。
気持ちまで暗く沈むような天気に、僕はがっくりと肩を落とす。
ちぇ。ツイてないなぁ
土方先生の補習を一回サボったら、罰として最終下校まで居残りトイレ掃除。
ムカつく。
傘なんて持ってないし、サイアクだ。
「やっばーい!」
「何これ!?夕立?!」
「あたしの傘入りなよー!」
「えっ?いいの?」
「もち!びしょ濡れになっちゃうよ?」
きゃあきゃあ言いながら、それでもちょっぴり楽しそうに帰って行く女子。
冷めた目でそれを眺めながら、僕は途方に暮れて立っていた。
どうしよ。濡れて帰る?
それで、明日風邪引いて学校休む?
あーもー。やだなー。
僕には、傘を差し掛けてくれる人なんて……
その時、ふと視界が陰った。
「 」
「風邪を引く」
「はじめくん……?」
何も言わず傘を差し掛けてくれたのは、紛れもなくはじめくん。
そのまま歩いて行ってしまうはじめくんを追いかけるのも忘れて、僕は呆然と立ち尽くした。
「…どうした。入らないのか?」
「え……あ」
僕は慌ててはじめくんを追いかけた。
「何でいるの?」
先に帰るって言ってたじゃない。
そう問えば、委員会だった、と返答された。
…嘘。今日は委員会がない日でしょ?
「……ふーん」
僕は密かにほくそ笑んだ。
だって嬉しい。
"総司を待とう"委員会でしょ?
「ありがと」
はじめくんが微かに頬を赤らめた。
「但し、こうね」
言うが早く、はじめくんから傘を取り上げる。
「あ……」
「だって、僕の方が身長高いし、」
それに、
「傘をさすのはカレシの役目でしょ?」
はじめくんが、目に見えて動揺した。
「ふふ」
土砂降りの雨が気にならないくらい、僕の心は晴れていた。
▲ *mae|top|tsugi#