上唇の内側、舌が届きそうで届かないところに口内炎ができた。
そこを守ることに全力を注いでいたら、今度は奥歯の後ろの肉の盛り上がったところにもできた。
痛くて痛くて食欲も湧かない。
土方さんは心配そうに、少しでも食えと僕の好物ばかり提供してくる。
彼は僕の食欲不振の原因を知らないのだ。
「あのね、口内炎が痛いんです」
「口内炎?どこにできたんだ?」
「上唇と奥歯の後ろ」
「二個も!?」
土方さんはとんでもない大声を出した。
「お前まさか、白血病じゃねぇだろうな!?!?」
「白血病!?何でそうなるんですか!?」
「いや、ほら、口が荒れたり出血が止まらなくなったりすると白血病って言うじゃねぇか……」
「……心配性もそこまでいくと病気じゃないですか?」
僕は呆れかえって土方さんを見た。
心配してくれるのは嬉しいけど、口内炎二個で一々白血病にされてたらたまらない。
「それに、口内炎の原因ってそれだけじゃないですよ?」
「あと何がある?歯磨ききちんとしてるか?」
「してますよ!土方さんとキスするのに汚かったら嫌われちゃいそうでイヤだし!」
「お、おう………じゃあなんだ?ストレスか?お前ストレスなんかあんのか!」
「それ失礼じゃないですか?僕にだって悩み事の一つや二つあるんですけど」
「なんだ、聞いてやるから言ってみろ」
僕はちょっと迷ってから言った。
「もっと土方さんに好きになってもらいたいなぁとか、もっと構ってもらうにはどうしたらいいかなぁとか、やっぱり男の体じゃ気持ちよくしてあげられないかなぁとか、」
「総司………」
「…これでも色々考えてるんだから」
土方さんは驚いて目を丸くした後で、優しく抱き締めてくれた。
「俺はお前が大好きだぞ。お前とヤって気持ちよくなかったこともねぇし、そもそも体が目的なわけじゃねぇぞ」
「へへ…僕も土方さん大好きですよ?」
「じゃあいいじゃねぇか。そんな、ストレスなんか感じるなよ。俺が傷つくじゃねぇか」
「…別にストレス感じてないですよ?僕はただ、悩んでるって言っただけです」
「じゃあ、何で口内炎ができるんだよ。疲れてんのか?」
僕は、最初から考えていたことを言った。
「………フェラしすぎると、できやすくなるって聞いたことがあります」
暫く間があった。
「……………それだな」
「それですよね」
僕たちはお互いに顔を見合わせて笑った。
「……んじゃ、俺も口内炎ができるまで舐めしゃぶることにする」
「やっ、やめてくださっ……んぁっ!!」
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