うーっわ。

扉を開けるとまず見えたのはぐしゃぐしゃに丸められた紙くずの山。
床に置かれたちっせえゴミ箱からはとうにあふれ出ていて、一番上にあった紙くずが山を転がってそのまま床に落ちた。
そしてまた新たに紙くずが投げられる。


「場所は決まったのか?」
「ん…、あぁ…それがな…」


さっきの紙を投げた張本人、机に向かってひたすらにペンを走らせているマルコに話しかける。
机の上には海図が広げられており、数か所の島の上にエターナルポースが置かれている。

あの話をしてから食堂に飯も食いに来ねえし、ずっと部屋に籠ってるなとは思ってたが……。詰めすぎだろ…。

さっきまで書いていたのは何かの計算だったようでその答えを出し終えたのか、ピッと線を書いてから小さく溜息を吐いた。
顔を上げたマルコの目の下には薄っすら隈が出来ている。


「やっぱり、ここしかねぇか…」


片手で目を覆ったマルコは小さく呟いた。


「なんか問題ありか?」
「いやまぁ…問題というか、不本意なだけだよい」


マルコはまさに言った通りの表情ををしていた。

マルコは海図上に置いていたエターナルポースの一つを取っておれに見せる。
そいつを受け取って見てみると。


「ゼイン島…」


瞬時にこいつの言わんとすることを理解した。
そいうことか…。

これはこの間赤髪が名前に渡していたもの。つまり、赤髪のナワバリの島。


「ここ以外にはなかったのか?」
「最短で行けて遊園地があるとなるとこの島だった。他は今から向かうとなると一週間以上かかっちまうよい」
「なるほどなぁ」


確かに何が起こるかわからねえし最短で行けるところが一番か。


「これって赤髪に連絡はするのか?」
「そこなんだよい…」


上陸するってことはナワバリの主である赤髪には伝えておいた方が良い気がする。後々何があるかわからねえし…。だけど。
マルコと目を合わせる。


「あの野郎、面白がって名前に会いに来るとしか思えねぇよい」
「全くの同感」


あの陽気なおっさんの愉快な笑い声が頭の中に響いた。


「とりあえず親父に相談してみるよい」
「それが一番いいな」


船の進路は航海士のトップであるマルコが一任されていると言えど、こういう何かがあるときには親父の指示を仰ぐのが正解だろう。


「まぁ、お前も少し休め」
「ん、あぁありがとよい」


ここにきてやっと本来の目的を思い出した。また詰めすぎて自身を休ませることを忘れてるだろう不死鳥にコーヒーと休息をとらせようとここに来たんだった。

おれからコーヒーカップを受け取ったマルコはズズズッと口に含んだ。


「何であれ決まりそうでよかったぜ」
「あぁ。まぁ次は誰が付き添うか。だな」
「あーそれはまた揉めそうだ…」


おれとマルコが小さく溜息を吐いた時、コンコンとノックが鳴った。
こんなノックしてくる奴なんて名前だろうかと思ったが、マルコがした返事に帰ってきたのは最も意外な男だった。


「ちょっといいか…」
「エース?」
「どうしたよい」


エースがノックするなんて珍しいことこの上ない現象だ。
きっと何かあったに違いないとおれとマルコは部屋へ招き入れた。

エースは何やら思いつめたような表情で部屋へ入ると、マルコの部屋のソファに腰かけた。手を組んで、両肘を膝の上にのせる。

その様子を不思議に見ているとエースは小さな声で話し始めた。

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