「この間釣りしたんだけどよ、そん時おれ寝ちまって、魚に引っ張られて海に落ちかけたんだ!」
「えぇっ、大丈夫だったの?」
「おう!ちょうど通りかかったマルコに引っ張られたんだ」


その後めちゃくちゃ怒られたけどな!わはは!!

今日も賑やかなエースの声が聞こえてくる。食堂で名前相手にいろんな話をしてやってるようだ。
大口を開けて笑うエースの前には、あれから変わらず小さい姿の名前。
記憶も10年前のまま、だけど、戻ってすぐのような不安気な様子はない。


「そうだ!名前も今から釣りしようぜ!」
「いいの?」
「当たり前だろ!暇そうなやつら誘おう!」
「うん!」


エースに連れ出される小さな背中を見送る。
名前の表情は昨日までよりも柔らかくなった気がするのはきっと…。
チラと視線を横へずらす。
コトとカップをテーブルに置き、ゴクリと喉を鳴らしたこの男、マルコのおかげなのだろう。マルコはエースに手を引かれ外に出て行く名前を優しい目で見送っていた。と、おれの視線にも気づいたらしい。


「なんだよい」
「いや」


生暖かい目を向けるおれをマルコが怪しげに見る。
昨日、名前が心配で部屋へ行ったものの、そこにはすでに先客がいた。


「やっぱいいとこはお前なのなー」
「は?」
「なんでもねえよ」


なんのことだとも言いたげなマルコを軽くあしらう。

にしてもマルコ的にはうれしいんじゃねぇかな。エースとああいう関係になってから名前はエースといることが多いし、この間一緒に出掛けていたこともあったがあんなのほんと珍しい。なにより、名前が昔ほどマルコに頼らなくなった。

大人になったってのもあるが、名前の心の中にあった不安、一人になりたくない気持ちとかがエースによって埋められたってのが大きいと思う。

そのエースとの記憶がなくなった今、名前が頼るのはもちろんマルコだ。
今のおれはなぜか名前に受け入れてもらえてないけど。


だけど、考えてることがある。いつ元に戻るかはわからないけど10歳の名前にしてやれなかったこと今ならしてやれるかもしれねぇんだ。


「なぁマルコ」
「あ?」
「おれさ、名前を遊園地に連れてってやりてぇんだけど」
「は?」


急にどうしたと言わんばかりのマルコの表情。それにおれは2年前のシャボンディ諸島でのことを話した。
18歳の名前が恥ずかしそうに言った。シャボンディパークへの憧れ。
あの時も結局連れてってやることが出来なかったし。


「なるほどねい…、確かに遊園地は連れてってやったことがなかったな」
「だろ、おれも考えたこともなかった」


名前が自分から言ってくれてから2年も経っちまったけど、今のこの状況は良いタイミングな気がする。
そのおれの考えにマルコも共感してくれたようだ。早速次の島の情報を貰ってくると席を立った。

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