「名前さん!!あ、あ、あな、あなたに一目惚れしました!ぼくと付き合ってもらえませんか?」
「えぇっ!?」


思わず、隣にいたマルコと目を合わせた。







「ふーーーん。で、どうすんだよ。あいつまた来てるぞ」


船縁から陸を見てみれば、名前を探すようにこちらを見上げる男の姿がある。2日前マルコと出掛けた時に告白してきたというトーキという青年だ。

マルコといる名前に白昼堂々街中で告白したらしい。もちろん名前は断ったらしいが、この2日間港に顔を出しにきている。


「恋人がいますって言ってもお話だけでも!って言われちゃって…」
「おれの目の前で告白なんざ、なかなか根性あるやつだよい」
「よっぽどだったんだろうなぁ」


マルコも感心したようにやつを見下ろしている。
トーキの容姿は綺麗に仕立てられた服に汚れなんて見当たらず、端正な顔立ち、いかにもな好青年だ。


「名前さん!お願いします!!一度だけ!!お茶一杯!!」


陸からこちらに向かって叫んでる。マルコの前でも告白するという根性、断られても簡単には諦めない心、ここへ通う行動力。なかなか熱いやつじゃねぇか…。


「退屈はさせません!!」


ザッとここまで音が聞こえるほどの勢いで頭を下げた。


「いいんじゃねぇのかい、茶くらい」
「えっ?」「はぁっ!?」


マルコの一言におれも名前も驚きに声を上げた。
だってまさかマルコがそんなことを言うとは思っていなかった。


「で、でも…」


名前の反応は当然だ。マルコが良いと言ったところで問題はまだあるだろう。今は出てていねぇが、名前にベタ惚れの恋人、2番隊隊長様がいるんだぜ。だがマルコは表情一つ変えずに言う。


「いつまでもあそこで待たれる方が罪悪感あるだろい、なら一杯だけ付き合ってくりゃいい」
「いやだからってな……」
「じゃねぇとあいつ出航するまで毎日来るぞ」


確かにマルコの言うことは一理あるっちゃある。名前の性格上、自分のせいで誰かに迷惑をかけることを嫌う。今だってトーキは何もかもを放っぽり出してここへ通ってるわけだ。あいつの生活のことを考えると名前はきっと心苦しく思ってる。

……だが、仮にこれがデートではなくお茶だけだとしても、変な言い方だが、エースの嫉妬の炎は燃え上がるだろうな…。マルコと名前のデートよりも、こいつとのお茶ってことに爆発するんじゃねぇだろうか。それを抑えるのが自分の役目だと自然と理解して泣きそうになる。
名前を見れば眉を寄せ難しそうな表情を浮かべて悩んでいるようだ。


「ん……」
「名前…」
「何も考えずあいつの友達になったつもりで楽しんでくりゃいい」
「……そう…だね……」


マルコの言い方ちょっとヒドイな。友達になったつもりって。なる気はないみたいな言い方だな。少しトーキが可哀想になってくるが、名前とお茶出来るんだから奴にとっては万々歳か。


「い、行ってくる…!」


決戦に行くような視線を向ける名前の頭を軽く撫ぜた。
本当に大丈夫なんだろうか…。






彼のオススメだというおしゃれなカフェで 向かい合って座る。注文を終え、待ってる間妙な沈黙が流れていた。


「あの…」
「はい?」
「名前さんの恋人…というのはどのような人なのでしょうか?」
「え?」
「えええ、いえ!あの、少し気になっただけで…!話したくなければ全然…!!」
「いえ…そんなことは…!」


トーキさんはおれは何てことを聞いてるんだ!と自分の顔を抑えた。


「エースは…、いつも笑ってて、でもたまに真剣なところがあって、強くて、わたしをすごく大切にしてくれている人…ですかね」
「…そっ」
「…ん?」
「そんな凄い人だと、僕、勝ち目ありませんね……」


トーキさんが自嘲気味に笑い、ちょうどその時注文した料理が運ばれてきた。
わたしのは綺麗に盛り付けられたクリームパスタで、トーキさんのは魚介パスタと一緒に頼んでいたパン。そこで少し違和感を感じた。


「トーキさん、それだけで足りるんですか?」
「え?はい、名前さんよりは多いと思いますが」
「あ…、そ、そうですよね」


不思議そうにこちらを見つめるトーキさんに笑って流した。


「あ、そうだこれ」
「えっ?」


トーキさんから差し出されたのは可愛くラッピングされた袋。受け取って中を見てみるとそこには可愛らしいピンク色のシュシュが入っていた。


「余計なお世話かもとは思ったんですが…、名前さんのシュシュ結構使い込んでるように見えたので、新しいものをと…」


手で自分の髪に付いているシュシュに触れる。もう2年近く使っていて自分でも汚れてきたようには思っていた。だけど新しいものを買おうなんて自分では思ったことなかったな…。


「名前さん…?」
「……あっ、ありがとうございます」
「いっ、いえいえ!」



そのあとも多少の沈黙はありながらもトーキさんはわたしを退屈させないようにといろいろな話をしてくれた。
少しあたりが薄暗くなってきて、ずいぶん時間が経ったんだと気付く。

窓から外を見ていると、この島は星がよく見えるんですよ。とトーキさんが話してくれた。


「そうなんですか」
「はい、まだ少し明るいですけど、夜になるととても綺麗です」
「へぇー……」


そう言われボーッと窓から空を眺めた。空を見ている時間も沈黙だったけど、これは心が落ち着く沈黙だ。

ガシッ!!

突然テーブルに置いていた腕を掴まれた。


「エ、エース…!?」


驚いて顔をそちらに向ける。するとそこには眉を寄せ、表情からも全身からも怒りのオーラを露わにしているエースがいた。


「…行くぞ」
「へぇっ!?ちょっ…!」


ぐいっと腕を引っ張られ慌てて立ち上がる。エースは全くこちらを見ずそのまま歩き出してしまい。わたしもエースに引っ張られるままにお店を出ることになった。

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