ぐいぐいと、名前の細い腕を引っ張り歩き続ける。後ろから何度もおれを呼ぶ声がするが振り返らない。今のおれは自分でもどうにも出来ないくらい怒ってる。


親父の遣いから帰ってくれば、いつもならすぐに迎えてくれる名前の姿がなかった。サッチにも少し驚かれた顔で見られ、もう帰ってきたのかよ。などと言われた。

事情を聞けば名前は島の男に告白されてそいつと2人でデートだと。フツフツと腹の中から何かが湧き上がる。気づいた頃には船を飛び出していた。


「エース!どこ行くの?」
「……」
「船はそっちじゃ…」
「船には帰らねぇ」
「え…?」


名前は不安げな声をあげたが、返事はせずそのまま夜の街を進んだ。見つけた宿で部屋をとりその部屋に入る。
部屋に入った瞬間名前をベッドに押し倒しその上に乗りかかり唇を塞いだ。


「んっ!?んんっ…!」


抵抗する名前の頭を掴んで抑え、そのまま深いものへと変える。角度を変え何度も何度も口付けた。


「んっ、はぁっ…んぅ…っ」


おれにされるがままで声が漏れ出す名前から唇を離し、そのまま首筋に唇を移動させる。首筋にキスを落としながら片手でシャツのボタンを外していけば突然頭ごと抱きしめられた。


「…エースッ……!」


か細い声が聞こえ、動きが止まる。おれを抱きしめる名前の腕は微かに震えていて、自分がしていたことを反省した。だけど、心ん中のモヤモヤは消えてはくれなくて、名前の首元に顔を埋めたまま声を出した。


「名前はさ、おれがどんだけ名前のこと好きか考えたことねぇだろ」
「それは……」


篭っているせいもあり、拗ねたようなおれの言葉に名前は言葉を詰まらせた。


「……ごめんなさい、わたしが無神経だった」
「いつもおればっかじゃねぇか…、名前は、おれのことなんか…」
「そんなことない!」


少し被せ気味に強く放たれた言葉に驚いて言葉が詰まる。名前の腕の力が緩んでおれは身体を起こしベッドの端に座った。すると名前も起き上がっておれの横に並ぶ。そのまま見つめるが、名前が恥ずかしそうに視線を外した。


「さっきだって、失礼なくらいエースのこと考えてた…。エースじゃないことに違和感ばかりで…。わたし、エースが思ってるよりもエースのこと好きだよ」


名前の言葉に目を丸くする。だけど、心の中のモヤモヤが晴れていくのはすぐわかった。


「エース、すき」


ジッと目を見つめてストレートにぶつけられるが、名前からこんな風に言ってくれることなんてほとんどなくて驚きのが勝る。が、だんだんおれ自身理解が進むと自然と表情が緩くなっていき、いつものように笑うことができた。それに安心したように微笑む名前の頬に片手をあてる。

また、軽く唇を重ねて、名前を、見つめた。


「なぁ…、いいか?」


おれの言葉を理解した名前は頬を赤くし、少しの間の後コクコクと2回頷いた。

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