静まった食堂。ほとんどの奴が手を止め、カクンカクンと一定の間隔で頭を振る人物に視線を向けていた。

前にいる名前を見れば、彼女もまた少し目を見張ってその様子を見て、かと思うと眉が寄り、顔が顰められた。エースも目と口をかっ開いてその様子を見つめてる。


「うそだろ…」
「マルコ隊長が…」
「飯の途中で…」
「寝てる…」


そんな声も上がり、おれは隣に座るパイナップルヘッドに視線をやった。目は閉じられているが、カクンと頭が下がればまたすぐに起き上がる、そんでまたすぐにカクンだ。その度に髪の毛がゆさゆさ揺れてる。

珍しいなんてもんじゃない、エースじゃあるまいし、マルコがこんな風に食事中に寝るなんて、20年くらい一緒にいるけど見るのは初めてだ。

ここ最近、オヤジの体調が悪いってのは船の全員に知らされていた。それもあってこいつがいつも以上に何かしら動いてたのは知ってる。きっと疲れが溜まってたんだろう。

全く、オヤジに続いてお前まで倒れたらこの船どうすんだよ。

たぶんこいつは起こして、ベッドで寝ろ。と言ったところで覚醒すればまたいつも通り頑張りすぎる気がする。だったらこんな状況だけどこのまま寝かせてやる方がいいのかもしれねぇ。とりあえずエースの様に飯に顔を突っ込まないようマルコの前からトレーを退かした。

その時名前が立ち上がりマルコの横に立った。
その様子に少し驚きつつ見守ると、マルコの肩にゆっくり手を置き少し揺すった。


「お、おい、そんなことしたら起きちまうだろ」
「だって、ベッドで寝ないと疲れ取れないよ」


最近マルコすごく疲れてたみたいだから…。

心配そうに視線をマルコにやって小さく呟く。


「ちゃんと休ませてあげないと」
「でも絶対そいつそう簡単に休まないぜ?」
「無理にでも休ませる!」


少しいたずらっぽく笑う名前に、おれは名前らしいと少し笑って頷いた。


「マルコ、起きて、部屋で寝よう」
「んん…、…眠くないよい」


薄っすら目を開けたマルコは顔をあげ名前を見るとそう呟いた。それに対し名前はすぐに、うそ。と怒ったように呟く。


「ちゃんと休まないと疲れ取れないよ」
「ほんとに疲れてないよい」
「じゃあその隈は何」
「んなもんねぇよい」
「ある」
「ねぇ」
「ある」
「ねぇ」
「あるってば」
「お、落ち着け名前」
「落ち着いてる。エースは黙ってて」


止めに入ろうとしたエースも名前の一言でしゅん。と落ち込んでしまったようだ。
それくらい今日の名前には迫力があった。一歩も引かないとオーラが表している。それにはマルコも黙った。

名前はマルコを強い視線で見つめ続け、ほんの数秒だったけどその間誰も言葉を発さなかった。その長く感じるほどの数秒後マルコが静かに言葉を発した。


「……オヤジの状態を船医から聞いて把握しておくこと、モビーの周囲の海軍海賊の動きの把握、航路の記録、次の島までの距離と時間の計算、航海士たちへの指示…今やっておいて欲しいことはこれだけだよい。……頼めるか?」


マルコが言い終え、おれやエース、その他にも聞いていた奴らの表情が明るくなった。それは名前も同じで、特にマルコに柔らかく微笑みかけ、そして大きく頷いた。


「もちろん」


マルコは少し照れくさそうに笑い返すと、名前の手を取って両手で強く握った。


「頼んだよい」
「うん、しっかり休んで」
「あぁ、悪いな」

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