珍しく、うちのかわいい妹のご機嫌が斜めだ。
ほっぺた膨らませて、そのぷるんとした唇ツンッて尖らせてる。

今日は朝からエースと島に降りて行ったと思ったら昼過ぎに名前だけが帰ってきた。それもこんな顔で。
島で何かあったのか、喧嘩でもしたのかはわからねぇ、だけど、こういう時はお兄ちゃんの出番かな。


「どうした名前、そんな顔膨らませて」
「サッチ…」
「エースと喧嘩でもしたか?」
「そんなんじゃ、ないんだけど…」


名前は視線を少し下げてハァ、と小さくため息を吐いた。


「わたしって、なんか子どもっぽいよね」


自分の身なりを見て小さく呟いた。今日の名前はひざ下までの白のワンピースにウエスト部分に細いベルトを巻いた格好。決して子どもっぽいなんて思えない服装だ。


「おれはそうは思わねぇけど、誰かに言われたのか?」
「ううん、言われたわけじゃないんだけど…」
「何があった?」


なんとなく言うのをためらうように名前は島であったことを話し始めた。




2人で大通りを歩いていると、白ひげ海賊団が来たことは町中に知れ渡ってて、たくさんのお店が呼び込みをしていた。

その時、露出度が高いけどとっても綺麗なお姉さんが声をかけてきた。

「そこのお兄さん、うちで飲んできません?安くしますわよ」

エースの腕に腕を絡めて大きなお胸をエースの腕に推し当てるようにしている。
わたしは眉を寄せて「行こう」とエースの腕を引っ張ったのだけど

「安くしてくれるってさ!ちょっと飲んでこうぜ!」

と、満面の笑みで言われ、まぁ少しなら。と思ったのだけど、その時、そのお姉さんがわたしを見て少し勝ち誇ったように笑った。それにカチンときてしまって、1人で帰ってきてしまった。




「あー、なるほど」
「うん…」


エースのやつもともと顔立ちは良い方だが、2年間でさらに身体鍛えたし、性格も大人になってきたからか、最近は島に降りりゃ色んな女から声掛けられてる。本人は名前一筋だし、全然気付いてねぇけど。今回も、エースは純粋に安くしてくれるのが嬉しかったんだろうけど、名前からすりゃいい気はしないよな。でも、これってエースに対する嫉妬が入ってるんだ、あいつが知れば喜びそうだ。


「エースは悪くないのに、その人に笑ってるエースにもなんだかいろいろ腹が立って…」
「それさ、エースに言ってやれよ」
「え!?こんなの言ったら子どもみたいって嫌がられるよ」
「そんなことないって、名前は子どもじゃねぇし、嫉妬されて嬉しくねぇ男なんていねぇから」
「嫉妬…?」


名前が小さく呟く。まるでその言葉を咀嚼して理解していくみたいな。するとみるみる赤く染まっていく頬。おれは少しニヤリと笑って頬づえをつき彼女を見た。


「わたし、嫉妬してたの…!?」


恥ずかしい!と両手を頬にあて顔を隠す。なんて可愛いんだうちの妹は。全く、本当に羨ましいエースのやつ。未だ名前が悶える中、食堂の扉が開き、エースが入ってきた。どうやらやつもすぐに引き返してきたらしい。


「おかえりエース、はやかったな」
「おぅ、名前先に帰っちまったしな…」


さっきの名前同様少しご機嫌斜めらしく、両手で顔を隠す名前へ怒ったような視線をやった。
エースが隣に座ると名前は手の隙間からエースを見た。


「ごめんねエース」
「なんで先に帰るんだよ」
「ごめん、わたし、嫉妬してたみたい」


それを聞いたエースの目がこれでもかと見開かれた。


「わっ」

「初めてだな、名前がそういうこと言うの」


エースは顔を覆う名前の両手を掴み顔から引き剥がす。すると真っ赤になった顔が現れ、それを見たエースは嬉しそうに笑う。


「エースは……なんかずるいよ」
「何がだよ?」
「気が付いてないもん、嫉妬させてること」
「あのなぁ、おれだって数えきれないくらい名前に嫉妬してきたんだぞ」


そんな言葉をエースがいい、また名前の顔が赤くなった気がした。


「おれは2年前から嫉妬ばっかだぜ」


その言葉に驚いたように目をみひらく名前にエースは微笑んだ。また顔を赤くしたらしい名前は少し気まずそうにエースから視線を外した。


こいつら…、なに食堂で甘酸っぱい青春してんの…!!??

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