二の腕を掴みそのままその感触を楽しむ。するとおれの脚の間で大人しく座っていた彼女がこちらを向いて見上げた。


「もうエース、くすぐったいよ」
「いいじゃねぇか、1週間以上触ってなかったんだぞ…!」
「それは…、ごめん」


途端に申し訳なさそうな顔をする名前に笑いかけ、頭を撫ぜた。そして後ろから抱きしめた状態のまま彼女の頭に顎を乗せた。小さくため息を吐いた名前は再び手元の雑誌へと視線を戻す。

久しぶりの名前の匂い、昨日の夜いいとこまでいったのにとんだ邪魔が入っちまった。今すぐ事に及びたい気持ちもあるけど、1週間分の名前不足はかなり堪えていて、ずっと触れていたいと思ってしまう。
名前もおれを避けていたことを気がかりに思っているのか目立った抵抗はしてこず、さっきみたいな反応を見せながらもおれにされるがままになっていた。

名前の手元の雑誌はナースから借りたものらしくて、覗き込めば今流行ってるらしいアイテムが小さな文字で紹介されていた。名前はこういう物を欲しがったことはないけど、やっぱ実際は思ってんのかな。


「名前」
「んー?」
「欲しいものでもあるのか?」
「えっ?」


驚いたようにおれを見上げた。と思うとすぐに逸らされた。


「…ないよ」
「うそつけ」
「ほんとだよ」


これ、絶対あるだろ。いつもの遠慮だ。全く、なんでこうあれが欲しいこれが欲しいって素直に言わねぇんだ。航海本とかならすぐ言うくせに、自分のためのものってなると途端に一歩引くよな…。まぁそこは名前のいいとこでもあるんだけど、おれの前では素直でいろよ…。


「……あのな、欲しいもんあるなら素直に言えよ、その方がおれは嬉しい」
「……いいよ、言ったらエース買ってくれるでしょ?」
「当たり前だろ」
「ほらぁ…」


だから言わない。と口を噤んでまた雑誌を捲り始める名前におれも少しムッとなる。


「ひゃっ!」


目の前にあった名前の首すじに齧りつくと名前はそんな声を上げた。身体もびくんと反応したのがわかり、そのまま唇を押し付けてチュウと吸い付く。微かに抵抗を示したけど、両腕でギュッと捕らえた。


「エ、エースッ…」


首すじに出来たマークをペロッと舐めれば名前はおれの腕の中で上体を返して距離をとるように腕を伸ばした。


「わかった!言う!言うから…!」
「ん」


おれもわかったと言うように頷き、彼女の腕をひっぱってさっきと同じ体勢に戻した。名前は観念したように雑誌の一カ所を指差した。


「このヘアピン…可愛いなぁって」
「へぇー」


その指さす先を見てみれば、金色の細いピンの先に花を模った飾りがついているヘアピンがあった。シンプルだけど、名前を惹きつけたのだろうそれをおれもまじまじと見つめる。


「でも名前、こっちのが名前には似合うと思うぜ」
「え?」
「このシュシュ」


おれが指差した箇所に映っているシュシュを見てると名前は、んー。と少し考えるような仕草をした。するとこちらを見上げてふわりと笑う。


「シュシュはいいや。エースに買ってもらったのがあるから」


キュンときた。今、キュンと。
おれがシュシュを買ったのはもう2年も前の話。最近はもうボロくなったななんて思っていたが、それでも名前は大切に使ってくれているんだと思うと途端に嬉しくなった。


「エース何ニヤニヤしてるの?」
「ん?何でもねぇよ」


不思議に首を傾げる名前に対し、緩む頬を抑えられず、少し強めに頭を撫ぜた。

決めた。次島に着いたら新しいシュシュをプレゼントしよう。それから名前が可愛いって言ったこのヘアピンも一緒に。きっと遠慮して困った表情をするだろうけど、嬉しそうに笑うだろうし、その2つは名前に似合うに決まってる。

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