コンコンッ

目の前の扉をノックし、数秒待つも返事は何もない。やっぱりまだ寝てるのかな。

昨晩、あの後、マルコと共に残っていた作業を一晩かけて終わらせたらしいエースはお昼間近になっても部屋から出てきていなかった。マルコは至っていつも通りに朝から食堂に顔を出していたけれど、少し疲れが残っているように見えた。マルコでさえなのにエースが普通に起きてこれるはずがなかった。
わたしも一緒にすれば良かったな。なんて今思ってももう遅い。昨日は勢いで自室に戻ってしまったのだから。

手にはマグカップ。エースの目が覚めるようにコーヒーを入れてきた。昨晩持ってった2つのカップはいつもの位置に収められていたからマルコが食堂に戻してくれたんだと思う。

さて。こんな風に考え事をしている間にまた数十秒が経った。
わたしはゆっくり手を伸ばしドアノブに手をかけた。あまりうるさくしないように静かに扉を開け中に入ってまた閉めた。

まず目に入ったベッドにはこんもりと盛り上がりが出来ていて、さっきまでのわたしの予想が当たっていたことを教えてくれる。
それに少し微笑んで机の方へ向かい、そこに持ってきたカップを置いた。

あ、昨日積まれてた書類なくなってる。

頑張ったんだなぁ。と布団の山を見れば微かにエースの寝息も聞こえてきた。

さすがにお腹空くだろうし起こそうと思ったけど、もう少し、寝かせてあげようかな。

布団の山を軽く摩って、離れようとした。


「んん……、名前…?」


起こしてしまった。そう思った時には布団の中から手が伸びてきて、わたしの腕が掴まれ、ベッドの上に引っ張られた。

気が付けば目の前にエースの顔があって、彼は眠そうに笑った。


「ごめん、起こしちゃったね」
「んー…、いいよ」
「おつかれさま」
「うん…」


いつのまにか腕はわたしの背中と腰に回っていて、エースは密着するように力を込め、わたしの首もとに顔を埋めた。そしてまたスースーと寝息を立て始めた。

これって、もしかしてこのまま寝ようとしてる…!?


「ちょっ、エース!」
「名前も寝ようぜぇ…」
「え、えぇー…」


こんな状況で眠れるわけがない。
エースが近すぎる。心臓がうるさい。

あぁ…もう…。

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