就寝前、マルコに昼間に言われていた報告書がまだ出来ていなかったことを思い出し、机に座った。

昼間の時点で既に遅れてたから次はさすがにキレかねない。

最近は名前が二人になるのを避けてるからか、おれの部屋に来てくれなくて、全く仕事が出来てねぇ。
おれが1人じゃ何も出来ねぇのわかってるくせに…。まぁ、おれが悪いんだけど…。


「あーー」


数分も経たず、ペンを投げ、書類の束に顔を突っ込んで動きを止めた。

名前に触れてぇ…。


もう何日経った?名前に避けられるなんてこんな地獄一体いつまで続くってんだ…。
もうこっちから部屋行ってやろうかとも思ったけど、次は自分を抑えられる気がしないからやめた。

書類は進まねぇし、完全に名前不足だし、何より眠いしで、もう寝ちまおうとベッドに飛び込んだ。


コンコン


その時控えめなノックの音が聞こえた。


「……エース。……ま、まだ起きてる…?」


会いたくて会いたくて仕方なかった人物の声におれは飛び起きた。

ギシッとベッドが鳴った。


「名前…?」
「うん……」
「ッ名前…!」


すぐに扉へ向かい勢いよく開けた。するとそこにはマグカップを2つ持った名前がいて、少し気まずそうにおれを見上げて笑った。


「溜まった書類……その、マルコに聞いて…その…」

進んでる?

緊張気味に話す名前に懐かしさとか嬉しさとかいろいろ感じたおれは満面の笑みで答えた。


「1人で出来るわけねぇだろ!」
「………あっ、ははっ…!!」


自信満々に声を張り上げたおれを見て名前は可笑しそうに笑い出し、おれは彼女の肩に触れて部屋へ入れた。


「わー…、全然進んでないじゃん」

これは大変だ。


なんて名前がおれの机を見てこんな声を上げるものだから、名前が来てくれねぇから。と唇を尖らせて言えば、ごめんね。と気まずそうに返ってきた。

いや。と返事をしておれはベッドに腰掛け両手を後ろについた。


「コーヒーここに置くね」


名前は机にマグカップを置くと、書類を睨みつけながら、よし。と声を出した。

たぶん、今から仕事の手伝いをしようとしてくれてるんだと思う。こんだけ溜まってりゃ当然だと思う。だけど、とてもじゃないけど、おれはそんな気分にはなれなかった。


「名前」
「ん?」


腕を掴み、彼女を引き寄せる。
おれの膝の上に座るようにして、ギュッと抱きしめた。

首筋に顔を埋めると彼女の匂いが鼻を通り抜けて、自然と心が落ち着いた。

それから微動だにせずにいると、名前の片手がおれの背中に回った。


「エース…ごめんね……」
「は…?」
「わたし…エースのことずっと避けてて…ごめんなさい」


顔を上げると、眉を下げて申し訳なさそうにおれを見る名前と目が合う。


「いや、突然あんなことしたおれが悪い。悪かった…」
「エース…」
「でも、もう避けるのはなし、辛え…」


名前を抱く力を強くして、頬に手を伸ばした。片手で覆うようにして、唇を合わせた。チュッと音を鳴らして離すと、エース。と名前がおれを呼んだ。


「ん?」
「わたしね、怖かったんだ。その…先へ進むのが…。でもね、エースとなら大丈夫って思えるよ…」


名前の言った言葉に目を見開いた。


「それって…!!」


おれが聞き返すと名前は顔を真っ赤にして頷いた。


「あ、で、でも!!あの、その…、わたし…初めて…だから…」
「おれとなら大丈夫って思えたんだろ?」
「えっ、うん…」
「なら安心しろって」


うん。とそれだけの返事も待たず、おれは名前の唇を塞いだ。


「んんっ………んぅ……はぁっ……」
「んはっ……名前……」
「……エース……」


バタン!!


「エースてめぇ!!!報告書今日中だって言ったろい!!一体今まで何やっ……!!…てめぇ…」
「マ…マルコ……!!?」
「仕事もせずに…呑気なもんだなぁ…えぇ?」
「ひっ……ははっ…」
「名前今日は部屋に戻れよい」
「あ、は、ははっはいっ…!」
「さぁエース、始めようかい…」
「うわぁっ、あっ、ああぁぁぁ!!」

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