あれから7年が経った。
わたしと彼らがあれ以来出会うことはなかった。

わたしはフーシャ村で実家の八百屋の手伝い。ときどきマキノさんのところへ行ってお話したり。

後は…自分の部屋の机に広がるの数々の本とコンパスや定規
幼少期一緒に過ごした彼らの海賊になるという夢、自分もそこに居たいと思い始めた航海士になるための勉強。

彼らと一緒にという子どもの頃の思いのためでなく、いつしか世界を見て回りたいというのが自分の夢になっていた。

でも、この夢の行先がどうなっているのか自分ではわからなかった。


「あら、航海術の勉強しているの?だったらガープさんに言って海軍の試験受けたらどう?航海術持ってれば海軍でもお仕事できるんじゃないかしら?」


マキノさんに相談すればそう言われた。
でも、海軍じゃ…、彼らと敵対してしまう…。

自分の夢のはずなのに、いつも頭に浮かぶのはあの兄弟の姿。
もう出会わないだろう。だけど、もしも再会した時に敵同士というのは…嫌だなぁ。


「へぇ、航海の勉強してるのか」
「…!!?」


誰…!!
気付かないうちに部屋の窓に人がいた。
枠に座って、わたしを見てニヤリと微笑む。


「エ、エース…くん…?」
「おう、久しぶりだな」


癖のある黒髪に頬に散らばるそばかす、少し鋭かった目は昔よりも柔らかくなったように思う。
昔と似ているのはここまでで、体格も手足の大きさも昔の比にならないくらい成長していた。


「どうしてここに…というかここ、2階…」
「ん?まぁ、そんなことは気にするなよ」


窓の枠から降りわたしの部屋に入るとまじまじと部屋の中を見回す。
顎に手をあてて何かを考えるように。

そんな彼をわたしは愕然と見た。
え、どうしてこんなことになってるの…!?なんでここに彼がいるの?
わたしに会いに来たの?目的は…?

頭の中には次々と疑問が浮かんで来る。

混乱した私が立ち竦んでいるとエースくんは「よしっ」と立ち上がった。


「お前はうちの航海士だな」
「はいっ!?」
「出発は3日後。コルボ山の海岸に来い」
「ちょっと待って、わたし…」
「そのために勉強してたんじゃねぇのかよ」


思わず押し黙る。確かに最初はそうだったけど…。


「船はデカくねぇから、この本はいいけど、あのぬいぐるみは諦めろよ」


わたしのベッドに置いてある牛のぬいぐるみを指してそう言うと「じゃ」とまた窓から飛び降りていった。慌てて窓から見るけど彼はなんなく着地し走って行ってしまった。

唖然とその姿を見送りわたしはベッドにへたり込む。

突然すぎて頭が付いていかない…。
どうして今までまともに話していなかったのに。それにあれはわたしも海賊になれということだろうか。いやいやさすがに彼の冗談だ。
昔からわたしを毛嫌いしていた彼がわたしを誘うはずがない。きっとからかっているだけだろう。

わたしは枕に顔を押し付けた。


「3日後行っちゃうんだ…」


それでも寂しいな。という思いは溢れて来て

籠ったわたしの声は枕の中に消えていった。

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