18.99パーセント 曰く付きの カップル不成立者たち 2月14日は過ぎた。 恋人がいない者同士の励まし会と銘打った、男女の飲み会は、2次会のカラオケルームでいくつかのカップルが既に成立していた。 そんな中、俺を含めたカップル不成立の男女4人が、一生懸命お酒を飲んだり歌を歌ったりしていた。 「なんていうかあ、ムギしゃんはちがうんスよねえ!」 俺の右隣に座った、元バレー部で身長が177センチあるベリーショートカット高田さんが、ジョッキのビールを飲み干してから語り始める。 「ムギしゃんさあ、背は小っこいし、顔も小っこいし、声も小っこいし…オトコって見ちゃうとめっちゃたよりないんスけど、もしオンナのコだったらすんげえ可愛いくてモテるって、オレ思うんスよ!」 酔っ払った高田さんの一人称がオレ、というところで、俺はもうアウトなのだが、高田さんに話を合わせるように、俺の向かいに座ったガテン系の宮沢くんも話し始めた。 「うん。ワタシも、麦山ちゃんはオンナのコだったら、すごいモテオーラを放ってる気がしてならないわ…なんかジェラシィ。フフッ」 酔っ払った宮沢くんは、完璧なオネエ言葉で、同性としても俺はアウトだった。すると俺の斜め向かい、宮沢くんの隣に座っているオタク系の西崎さんも話し始めた。 「なんというかですね、麦山さんはショタ系なので、ショタ萌えする人じゃないとヒットしないんだと思います。はい。あ、私はショタ系が嫌いじゃないんですけど、ショタよりもリーマンですよねリーマン。あそこにいる峰氏、あのスーツとネクタイで激萌えの彼ですけど、彼はもうド真ん中ですよね。胸にドキュンときましたよ。はい」 酔っ払う前から、西崎さんの話している内容がうまく聞き取れない俺は、西崎さんとはナイなあと思っていた。 溜め息を吐きながら、俺はグラスを両手で持って、カシスオレンジを口に運ぶ。その時、左隣で恋人になったばかりの彼女といちゃいちゃしてた河口くんが俺の肩にぶつかって、カシスオレンジが零れて手にかかってしまった。 「うわあ!ちょっと!!」 「あ、悪りいな!ごめん!!」 俺は河口くんの袖をぐっと掴んで、上目遣いで睨んだ。 「ごめんって言うより先に、行動で示してよ!」 「あ、そうだな!おしぼりおしぼり…」 「ここ、舐めて拭き取って」 カシスオレンジでベタベタした右手を、俺は河口くんの前に差し出した。 「舐めて、って…」 「早くして」 「ああ、うん…」 気が動転している河口くんは、俺の右手を手に取ると、ぺろっと親指の腹についたそれを舐めた。くすぐったくて、思わず声が出た。 「ひゃん!」 「え?!」 「そんなにゆっくり舐められたら、くすぐったいだろ…バカ」 くすぐりに耐えるべく深呼吸をして身を竦める俺を、河口くんは呆気に取られたような顔で見ている。 「もう、いいよ。自分でやるから…」 オレは自分の手を引っ込めると、河口くんが舐めた同じ場所を自分の舌で舐めてみせた。 「ご、ごめんな!ほんとに、舐めるのも下手でごめん!!あの…これ、俺の連絡先だから、後でその服のクリーニング代請求してくれよ!頼む!!」 ごそごそとポケットを探って、河口くんは自分の名刺を僕のズボンのポケットに無理やり捩じ込んできた。 「ヤダ!ちょっと、いらないよこんなの!!」 「じゃあ、俺から君に会いに行くから、君の連絡先を教え…いてててて!!」 河口くんの隣に座っている、彼女のなりたての女が、河口くんの足を思いっきり踏んづけて、部屋から出て行ってしまった。その後を、河口くんが追いかけていった。 「麦しゃんはドSッス」 「小悪魔ちゃんよねー」 「女子になったら、男子にモテモテ、女子にシカトされるタイプですよね、はい」 「うるさいなあ…」 俺はまだベタベタする手を、近くにあったおしぼりで拭きながら…カップル成立99%の合コンなんて、もう2度と来ない、と誓った。 【end】 〔次へ〕 (2008/02/15) 〔前へ〕 |