《Before, it's too late.》 #03_男の子、女の子:03 一週間経った。 季一先輩とのデートから。 直人と口を利かなくなってから。 一週間が、過ぎていた。 急に直人に距離を置かれて、どうすることもできなくなっていた。 いつから、誰と、どんないきさつで付き合うことになったのか、あたしはちゃんと聞いてない。 …あの感じだと、訊いても答えてくれないに違いないけど。 学校では、あたしという存在が直人の視界に映らなくなっているかのように、なにもかもスルーされる。 それは結構なストレスをあたしに与えていた。 直人との距離を置いた付き合い――というよりも、隣に直人がいないこと――がなかったから、毎日がぎこちなくて、ぽっかり穴が空いたようだ。 正体不明の焦燥感と喪失感に苛まれる。 ――こんなこと、今さら言われても困るかもしれないけどさ 嬉しい、はずだった。 奇跡がおこった。 なのにあたしは即答もせず、直人のことばかり、気にかけている。 ――“フリ”じゃない彼女になってくんないかな 直人が、季一先輩に挨拶したらしい。 彼女ができたからあたしの面倒見てられないんでよろしく、と。 「何様のつもりよ…」 零れたため息に、独り言が混ざる。 季一先輩は『矢野くんに言われたから言う訳じゃないよ』なんて、苦笑いしていた。 あたしは何を気にしているのだろう。 「痛たた…」 胃がシクシクする。 もう、一週間。 返事、しなくちゃ。 [*]prev | next[#] bookmark |