《Before, it's too late.》
#03_男の子、女の子:03



 一週間経った。


 季一先輩とのデートから。

 直人と口を利かなくなってから。

 一週間が、過ぎていた。


 急に直人に距離を置かれて、どうすることもできなくなっていた。

 いつから、誰と、どんないきさつで付き合うことになったのか、あたしはちゃんと聞いてない。

 …あの感じだと、訊いても答えてくれないに違いないけど。

 学校では、あたしという存在が直人の視界に映らなくなっているかのように、なにもかもスルーされる。

 それは結構なストレスをあたしに与えていた。

 直人との距離を置いた付き合い――というよりも、隣に直人がいないこと――がなかったから、毎日がぎこちなくて、ぽっかり穴が空いたようだ。

 正体不明の焦燥感と喪失感に苛まれる。




 ――こんなこと、今さら言われても困るかもしれないけどさ


 嬉しい、はずだった。

 奇跡がおこった。

 なのにあたしは即答もせず、直人のことばかり、気にかけている。


 ――“フリ”じゃない彼女になってくんないかな



 直人が、季一先輩に挨拶したらしい。

 彼女ができたからあたしの面倒見てられないんでよろしく、と。


「何様のつもりよ…」


 零れたため息に、独り言が混ざる。

 季一先輩は『矢野くんに言われたから言う訳じゃないよ』なんて、苦笑いしていた。

 あたしは何を気にしているのだろう。


「痛たた…」


 胃がシクシクする。



 もう、一週間。

 返事、しなくちゃ。







- 31 -



[*]prev | next[#]
bookmark



book_top
page total: 47


Copyright(c)2007-2014 Yu Usui
All Rights Reserved.