《Before, it's too late.》
#01_キス以上、恋人未満:14



 おかしい…?

 そりゃ、夏目先輩たちみたいに恋人同士だったら、そんな考え方もあるのかもしれないけれど。

 そんなことを言い出す季一先輩は、去年までと違う人みたいで、あたしはときどき、戸惑ってしまう。


 ――卒業まで、彼女のフリしてくんない?


 そう言ったのは、季一先輩なのに。

 こんなんじゃ、まるで――。






 最近の季一先輩は、様子が変だ。

 いつから?

 あたしに思い当たるのは、夏祭りのキス。

 ううん、キスの前。

 あたしのため息、から?

 あのときのため息を、季一先輩はどう受け取ったんだろう。

 あたしがあんなため息をついたから、季一先輩はキスをしたのかもしれない。

 でも、待って。

 抱き締められたりするようになったのは、夏祭りの前くらいからだった気がする。

 何がきっかけ?

 去年までは、こんなこと、少しもなかったのに。


 それとも。


 全部あたしの思い込みで、抱き締めるのも、キスも、デートのお誘いも、その先に繋がっていくきっかけに過ぎないだけ?


 ――なーんにもさせないなんて、彼女じゃないよねぇ


 クラスの誰かが話してた。

 どういう意味なのかは、あたしだって判る。判る、けど。


 “フリ”でも、彼女だから。

 キスの先まで望まれたら、受け止めるつもりで、やっぱり覚悟をしておいたほうがいい、ってこと?

 思い込みすぎ、といえばそれまでだけど、でも、だって、そんな話はよく聞くし。


 あたしと季一先輩の約束に、そういうことをするとかしないとか、チラリとも話題に出たことはない。

 ただ一度、夏祭りの夜。


 ――だったら、デートでキスしたっていいよな



 例え、季一先輩が、あたしを好きじゃなくても。









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