《Love Songs》
#01_そして僕は途方に暮れる:3



 指を俺に握られたまま、いつもの形を無理矢理半分描いて、止まった。

 止まった指先が、窓に触れたまま、微かに震えている。


「…やめろ」


 結婚、すんだろ?

 他の男のもんになるんだろ?


「あたし、…っ」


 何で泣くんだよ。

 お前が泣いても、してやれることがないんだから。


「ねえ、どうしよ、あたしやっぱり、…――んんっ」


 やめろ。

 頼むから言うな。

 判ってるから。

 ちゃんと、知ってるから。


 今は俺が塞いでる唇も。

 抱き慣れた細い腰も。

 俺のものじゃない。


 だから、刻み込んでやるよ。

 優しくしてやれない、って。


 お前を泣かせていいのは俺だけだ。

 間違っても、結婚してからあいつに泣かされんなよ?


 しっかり覚えとけ。

 俺は離れてやることすらできないんだ、ってことを。






 いつになく、乱れた。

 身も心も乱してやった。

 焦らして焦らして、欲しがってもなお、焦らしまくった。

 こんな風にお前を溶かしてやれるのは、俺だけだ。


 もっと、俺を求めればいい。

 上気した顔で何度も名前を呼ばれて、気が狂いそうだった。

 あいつの指が触れた場所が、溶けてしまいそうだった。

 いっそ、溶けてしまえたらいい。


 中に出してやろうかとすら考えたが、かろうじて止めた。

 俺は優しくできないだけで、お前を傷付けたい訳じゃないから。




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