《蛍の群れ》 #02_ヤキモチの正体:26 「わ、っ」 驚く隙もなく、顔中にキスが降ってきて苦しくなる。 「ちょっ、望月さ、」 手の平で望月さんの口を押さえて、一息つく。 「おひょえへろひょ」 声が、直接手の平に染み込んできて。 ビリビリと痺れるのは、手の平だけじゃない。 ドキドキを通り越して、あたしは爆発寸前なのに。 何て言ったか判らないけど、望月さんの目は、ちょっぴり意地悪な色をして。 「今度はこんなんじゃ済まないからな」 「え――っ、ん、」 反論の余地もなく、あたしはまた、望月さんの唇に溶かされる。 ホントに甘いのはあたしじゃなくて、きっと望月さんのほうだ。 初めての“彼氏”になった望月さんに、あーちゃんはあたしの“お目付け役”の引導を渡した。 あの、あーちゃんが。 どうやら、あーちゃんは望月さんに全幅の信頼を置いているらしい。 「あぁ、それは違うよ」 あたしがそう言うと、望月さんは喉の奥で、さもおかしそうに笑う。 約束の蛍を見に連れて行ってもらうので今日は帰りが遅くなる、と、あーちゃんに伝えた。 遅くなるなんて、絶対許してもらえないと思っていたのに、 『日付が変わるまでに帰ってくんのよ』 返ってきた返事は、実にあっさりしたものだった。 [*]prev | next[#] book_top |