▼ 山田が死ぬ話2(番外編・if)
25歳冬、午後2時。
お気に入りのスニーカーの靴紐がほどけていたので結び直す。冬の空気を目一杯吸い込んで、気合を入れるためにパチンと両手で頬を叩く。
「よし!」
俺は今から松山に会いに行く。
小さな白いトートバッグには、財布と携帯と充電器とそして大事な指輪を入れて。あ、あと気持ち!松山への気持ちもいっぱい詰め込んで、そして家を飛び出す。
いつも通る道もどこかキラキラして見えて、うまくいくとは限らないのに胸がドキドキわくわくしてくる。こんな高揚感、いつぶりかな?
ドキドキが収まらなくて、心を鎮めるためにある人物に電話をかける。
通話中。
ちぇっ。まぁ彼も幸せそうだし、しょうがないか!
幸せそうな人を見ると、早く松山に会いたいなと思う。
元気にしてるかな。笑ってるかな。泣いてないかな。幸せになってるかな。
今日からは俺が幸せにしてあげるけどね!!
高揚感でふわふわして気付かなかったんだ。周りが見えてなかったんだ。
信号が赤だと気付いたときには遅かった。
ごめんね、松山。
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