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▼ 山田が死ぬ話(番外編・if)


25歳冬、午後2時。
知らない番号からの着信。

「もしもし。どちら様ですか。」
「俺。覚えてる?」

電話口から聞こえたのは、高校の頃少し苦手意識のあったクラスメイトの声。

「覚えてます。で、用件は?」

なんで俺の番号を知っているのかという疑問は飛ばす。

「急かすなぁ。」

この後少し用事があって出なくてはいけない。苦手意識と相まって、つい用件はと急かしてしまうのもしょうがないだろう。

「あの、さっさと用件言ってもらえないと困るんですけど。」

なかなか用件を話そうとしない相手。チクタクと時計の音だけが静かな部屋に響く。



「もう切りますよ。」
「山田が死んだ。」



ほぼ同時だった。確かに聞こえたのは高校の時、いや、今でも恋い焦がれて仕方ないあの人の名前。

「事故で。昨日、お前に会いに行く途中だったって。」


嘘。


「嘘じゃない。」


だって山田は


「山田はもう一度お前に会おうとしてた。」


カタンと電話が床に落ちる。
頭も目の前も真っ白で、思考が追いつかない。


「山田はずっとあの頃から松山、お前のことを思ってたよ。」


なんでもっと早く伝えなかったのだろう。もっと早く会いに行こうとしなかったのだろう。

じわじわと涙が込み上げてくる。

そんなことを考えても遅いのに。もう声も、表情も、わずかしか思い出せない。

「山田......!」


俺はその日、あの卒業式の日ぶりに大声をあげて、泣いた。


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