小説 | ナノ


▼ 山田くんと松山くんの恋模様 1

春。入学式。

「君の髪の毛めっちゃ綺麗だね〜!サラサラ!」

そう言って俺の髪に触れて笑う君に、俺は一瞬で恋に落ちた。






元々女の子には興味がもてなかった。好きになるのはいつも男性で、遠くから見てるだけだった。だから今回のこの恋も何も起こらずに終わると思っていたのに。つくづく神様は意地悪だ。

「うっわ!髪の毛めっちゃ綺麗!」

聞きなれた声。いつも見ていた人の声がする。声のした右側を見ると、想像していたその人が頬杖をついてこちらを見ていた。

「ははは〜!そんな睨まないでよ。俺山田チアキ。3年になって知らない人と隣とか嬉しい!仲良くしてね。よろしく〜!」

「松山朝陽。よろしく。」

山田・アンソニー・チアキ。俺の1年の頃からの想い人。
3年になって同じクラスになっていたのは知っていたけど、まさかこのタイミングで隣になるなんて思ってもいなかった。

あまりの緊張に、自分の名を名乗る声が震える。知ってたけど、知ってたけど、かっこよすぎて顔面を直視できない。耐えきれなくて視線を逸らすと、横からブハッと大きな笑い声が聞こえてきた。

「やばい。松山くん...だっけ?俺に興味ないの?」

興味?そんなのあるに決まってる。
でもそれを表に出したら軽蔑されるのなんてわかってるから。

「なんで?俺お前のこと知らないから興味も何もないけど。」

なるべく無表情で淡々と。自分はあなたに一切興味がないと態度でわかってもらえるように、山田くんの方を見ずに話す。

すると横の想い人はまたブハッと大きく笑った。

「まーじで?!俺さ〜自分で言うのもなんだけど、女にモテるし人脈もあって友達も多いの。みんな俺に興味あんの。だからね、松山くんみたいに俺に興味がない人って初めて見た。ねぇねぇ、俺と仲良くしよ?」

仲良くしよ?!

なんで俺なんだとその発言にびっくりする。思わず右に首を回すと、ニカっと笑う山田くんと目があった。

「ね?」

スッと手が差し出される。
動揺して山田くんの目と手とを交互に見つめていると、我慢できなくなったのか、差し出されたはずの山田くんの手が伸びてきて、俺の手を握った。そしてそのままブンブンと上下に振られる。

「わ〜!めっちゃ嫌そうな顔してる!ウケる〜!!」

正直もう頭が混乱状態で山田くんの発現が理解できない。

「これからよろしくね、松山くん!!」

俺はただコクコクと頷くばかりだった。





高校生活3年目、初日。
今年は波乱万丈の1年になりそうだ。



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