小説 | ナノ


▼ Wiederholen 2

すきなひとが恐ろしい顔でこっちに向かってきて、俺を殴り殺す。
気が付くと朝を迎えていた。




最初はワケがわからなかった。
俺は殺されたんじゃなかったっけと殴られた部分を確認してももそこに傷はない。
夢かと思ってテレビを付けると、数週間前に見たはずのニュースが流れている。
とりあえず過去の記憶を辿って生活をそのまま続けると、俺はまた数週間後にすきな人に殺された。



俺は親友がすきだった。
でもその親友には一個下の男の恋人がいた。俺の方が親友のことを前からずっと見ていたしすきだった自信もある。けど、嫌われたくなかったから手を出せなかった。女だったらまだ許せたかもしれないのに、よりによって親友の恋人になったのは男。最初にそいつを紹介されたときはその場で殴り掛かりそうになったぐらいだ。

俺はそいつが大嫌いだ。できるならそいつから親友を寝取ってやりたい。
でも親友はそいつのことがだいすきで。俺はすきな人を悲しませることはできなかった。





大嫌いなそいつは、本当に糞野郎だった。
とある日、そいつから親友のことで話があると呼び出された。
場所は親友とそいつが同棲している部屋。何の危機感も持たずそこに向かった過去の俺は、本当に馬鹿だった。

気が付くと大嫌いな奴のモノが俺の体内に埋まっていて、目の前のそいつは荒い息で俺にすきと言いながら腰を振っていた。
頭がはっきりしない中口を開くと、口からは嬌声だけが零れまともな声は紡げない。


ぼーっと玄関の方を見ると、そこには俺の親友ですきな人が立っていた。
途端にクリアになる思考。上に乗っているそいつを全力でどかそうとしていると、親友がこっちに向かってきて俺を殴った。

その後のことはよく覚えていない。ただ、すきな人の怒りの混じった悲痛な泣き声だけは今でも耳に残っている。




それが最初。その後も何度繰り返しても俺は大嫌いな奴に犯され、だいすきな人には殺された。
どうすればこのループは終わるのだろうと何度も試行錯誤した。でも何回繰り返しても俺は犯され最後には殺される。

そのうち思考も感覚も麻痺してきて、俺はだんだんすきな人に殺されるのが快感になってきた。今回はどうやって殺してくれるのか、どんな顔で声で殺してくれるのか、そればっかを考えて過ごすようになっていった。




そしてとうとう今回も運命の日がやってきた。
今回もお決まりのように俺は大嫌いな奴に犯されてすきなひとの帰りを待つ。

ドアが開くまであと5、4、3、2、1、


ーガチャ


俺はその瞬間一際大きい嬌声をあげた。

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