小説 | ナノ


▼ まるでソーダのような

「千明ーー!!かえろーーぜーーー!」
「おう!今行くーー!!」

隣のクラスの朝陽とは友達でもあり、恋人でもある。
みんなには内緒の秘密の関係。

今日は7月22日。明日からは夏休み。
連絡をとれば会えるのだけれど、それでも毎日会えなくなるのは寂しい。


2人並んでいつも通り歩く。
校門を出た。

「あのさぁ...今日はちょっと遠回りして帰らねぇ?」

ほんと、なんでこいつには思ってたことが伝わるんだろう。

「俺もそれ思ってた。今日は、まだ朝陽といたい。帰りたくない。」
「ん。シンクロだな。じゃあいつも通らない道で帰ってみようぜ。」

嬉しい。心臓がトクトクと早鐘を打つ。

「にやにやすんなよ!ったく、かわいいな。」

自然と頬が緩んでいたのを見られていたみたいで、恥ずかしさに顔がボッと赤く染まる。
朝陽といられる一瞬一瞬が幸せすぎる。



路地のような細い道に入った。

「なぁ...手、繋いでいい?」

周りに人がいないのを確認し、そう勇気を出して聞いてみた。
付き合って3ヵ月、実はまだキスはおろか手も繋いだことがない。

手が緊張で汗ばむ。

黙ったままの朝陽を恐る恐る見上げると、手にするりと朝陽の指が絡んできた。

「お、お前とこういうことするの初めてだからほんと...緊張する。あんまこっち見んで...。」

空いている手で顔をパタパタ扇ぐ朝陽の顔は真っ赤で。
俺もつられて更に顔が真っ赤になる。

本当にすきだなぁ...。

すきが溢れ出して心臓が苦しくて、それでも胸は幸福感でいっぱいで。
俯いて幸せを噛みしめる。



「千明。こっち見て。」

呼ばれて朝陽の方を見ると、目の前に朝陽の顔がアップになって、唇に柔らかい感触がした。

たった一瞬の出来事。離れた唇。反対に絡み合う熱い視線。

「朝陽」

今度はこちらから彼の名前を呼ぶ。

もう一度、唇と唇が合わさった。


暑い夏の日。
俺達は、友達から少しだけ、本当の恋人に近付いた気がした。



prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -