小説 | ナノ


▼ 浮気癖(黒バス・黄黒)

中学ではただの尊敬だった。
高校では恋愛感情になった。
大学では愛情になった。


大好きだよ、黒子っち。

なのに、ねえ、なんでなの?







俺と黒子っちは高校から付き合い始めた。
本当に大好きで大好きで。
バスケと黒子っちがいれば幸せだった。
火神っちは目障りだったが、黒子っちの相棒だしバスケの実力は認めていたので仲良くしていた。


今思えば、あの時が一番幸せだったかもしれない。





大学生になった。
黒子っちは火神っちと同じ大学に進んだ。
俺はモデル業に専念するため、大学進学はしなかった。
俳優の仕事も舞い込んできたりして、仕事が忙しくなって黒子っちと会える時間が減った。
でも二週間に一度は時間を見つけて黒子っちと会っていた。
高校の時とは違い、身体を重ねたりもした。
心から黒子っちと繋がってる気がして幸せだった。
黒子っちの20歳の誕生日、思い切って黒子っちにプロポーズした。
黒子っちが泣きながら

「黄瀬くん、愛してます。」

と言ってくれたときは、死んでもいいやって思った。
ただ、黒子っちが頻繁に火神っちと遊んでいたのは嫌だった。


この人と一生過ごしたかった。





黒子っちが社会人になった。保育士として働き始めた。
と同時に同棲を始めた。
毎日黒子っちが見れる、触れられる、声が聞ける。
俺らは結婚できないけど、結婚したらこんな感じなんだなって思った。
色んな黒子っちが見れて幸せだった。
そんなときだった。


[黄瀬涼太、有名女優と密会!?!?]


「黒子っち違うの信じて!これはこの前の飲み会のときの写真で、周りにスタッフとかもいるんス!!」

「黄瀬くんの言っていることは、本当だと思います。だけど、だけど...!すみません。ちょっと今は君の顔、見たくないです。」


本当だと思ってるなら、なんで俺の目を見てくれないの?
なんで俺の顔見たくないの?
なんで泣くの?
なんでそうやって被害者ぶるの?
黒子っちの気持ちはわからなくもない。
だけどさ、だけど。
頭がぐちゃぐちゃで言葉にできない。


「わかった。しばらく戻らない。」


言葉にできたのはこれだけだった。
俺は泣いている黒子っちを背に、外へ出た。





街に着いた。
財布の中を見ると、千円札が3枚しかない。
一週間ほど家を開けたかったのに、これじゃ無理だ。
自分に対し舌打ちをし、飲み物でも買おうと自販機へ向かっていたそのとき、声を掛けられた。


「あのぉ、もしかして、黄瀬涼太ですかぁ?」


ケバケバして尻軽そうで、いかにも黒子っちが嫌いそうな女だ。
って、なんで俺は黒子っちのことを考えているんだ。


「そうスけど、なにか用スか?」

「えっとぉ、そこにお酒の美味しいお店があるんですけどぉ。よかったら一緒に行きませんかぁ?」


いつもなら断る。
こんな女と酒なんて、どんなに美味しい酒でも不味くなる。
しかし今のこの金銭状況。
目の前にはいかにも泊めてくれそうな尻軽女。


「いいっスよ。ついでに何日か、俺を泊めてほしいんスけど...。いいっスか?」


少し眉を下げ、いかにも困ってそうな表情をする。
こういうとき、仕事で鍛えられた笑顔や演技力が役に立つ。
芸能活動をやっていてよかったと思った。


「もちろん!むしろ大歓迎だよぉ!」

「ありがとう!助かったっス!あ、でも俺今日はちょっと早くシャワー浴びたくて...。お酒はまた後日にしないっスか?」

「涼太が言うならいいよぉ。じゃあ私の部屋行こっか?」


こいつ、いきなり名前呼びかよと思ったけど、それを口にしてせっかく手に入れた寝床を失うのも困るから口に出さなかった。
女は煩い。
テキトーに女の話に相槌していたら、いつのまにか部屋に着いた。


「涼太!先シャワー浴びていいよぉ。場所はそこね〜。タオルは置いておくからぁ。」

「サンキューっス!」


シャワーを浴びてる最中に頭に出てくるのは黒子っちばかりだった。
大好きだけど、今帰ってもお互い何を言い出すかわからない。
黒子っちも俺も、頭を冷やさなきゃ駄目だと思う。
そんなことをぐるぐる考えていても今は埒があかない。
シャワーを浴び終わり部屋に戻ると、女がベッドに寝ていた。


「涼太ぁ。何日でも泊まっていいけどさぁ、その代わり...シてくれるよね?」


こんなことになるだろうとは、女の部屋に行く前からわかっていたから、驚きはしなかった。
女を抱くのは中学以来かになるななんて思いながら俺は女を抱いた。
柔らかくて甘い香りがして気持ちよかった。
男の骨ばった感じとは全く違う。
ハマる予感がした。










2週間が経った。
俺と女は部屋にいるときはずっと抱き合って過ごした。
たまに仕事が休みの日には、一緒に出掛けた。
女が手を繋げと煩いので、渋々繋いだ。
渋々?
いや、今思い返せばノリノリだったかも。
だって、人とこうして街中で堂々と手を繋げるのなんて久々だったから。
一種の快感だった。
黒子っちとはこういうことはできなかったからね。



黒子っち。



そういえば、ずっと忘れていた。
女との単純な快感に夢中で、頭の中から抜けていた。
だって連絡も来ないから。
いや、黒子っちは自分から連絡なんてしない人じゃないか。
途端に黒子っちが心配になってきた。
彼は面倒だと食事すら自分で摂らないじゃない。
どうしよう今頃倒れていたら。
俺が出ていってから2週間、人間って食事を摂らないでどれだけ生きていられるっけ?


俺は女の家から飛び出した。
女が何か煩く言っていたけどそんなのどうでもいい。
ただただ走った。
頭の中は後悔でいっぱいだった。
どうして忘れていたんだろう。
馬鹿じゃないか。
浮気をして黒子っちを忘れて。
黒子っちがもし、もし死んでいたら、俺は生きている資格なんかない。
ごめんね黒子っち。
大好き、愛してる、だから生きてて。












































走って走って走って、やっと黒子っちとの家に着いた。
合鍵を取り出し、ドアを開ける。
家の中はとても静かだった。
まさかと重い、靴を脱ぎ捨ててリビングに走る。
ドアを開けて、目に飛び込んできて状況に俺は固まった。


「ん...はぁ、かがみく...んっ。」


響く水音と荒い息遣い。
大好きな水色の髪と見たことのある赤い髪。
重なり合う唇と唇。
時折見える赤い舌。


え、え...?
目の前の状況に頭がついていかない。
なんでなんでなんでだってくろこっち俺と付き合っててかがみっち友達だって前くろこっち言っててくろこっちきせくんしかすきにならないすきじゃないって言ってすきだよあいしてるってなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんで




なんで?








あ、黄瀬くんお帰りなさい。
女の子との浮気は楽しかったですか?
黄瀬くんがあんまりにも楽しそうだったので僕も浮気というものをしてみました。
火神くんは本当にいい身体でしたよ?
もしかしたら君よりいい身体かもしれません、ふふっ。
ん?火神くんどうしたんですか?
早く準備しろ?そうでしたね、準備します。
黄瀬くん、今から僕火神くんと夜景を見に行ってきますね。
留守番お願いしますなんていいませんよもちろん。
君も女の子との用事があるのなら行ってきてください。
女の子を待たせてはいけません。
女性は大事にしてくださいね、黄瀬くん。
え?手を繋ぎたい?
だから恥ずかしいってこの前いいましたよね火神くん。
ノリノリだったじゃねぇかって...まぁ、僕も浮かれてましたけど...。
そんなことはいいんですよもう!早く行きますよ!
では黄瀬くん、行ってきますね。
帰りは明後日の夜になるかもしれません。
なんでって...明日は青峰くんとも約束があるので。
彼は自分の気が済むまで僕を抱くので、次の日はほぼ一日動けないんですよね。
あ、待って下さい火神くん拗ねないでください。
また3人でシましょうね。青峰くんもシたがってましたよ。
ん、黄瀬くんぼうっとしてどうしたんですか?
僕たち本当に行ってきますね。

あ、黄瀬くん。






















浮気って楽しいですね。
こんな楽しいことを教えて下さってありがとうございます。
黄瀬くん大好きです。
では。



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