▼ ただのバカになりたい (番外編)
俺にはだいすきな人がいる。
歳は一個上の高3で、俺の兄ちゃんと同じクラス。背は高めで目はたれ目で眼鏡かけてて頭もいい。よく兄ちゃんと遊ぶために家に来てて、ほんと一目惚れみたいなもんだった。
その人が遊びに来るたび勉強教わりいったり、ガンガン話しかけたりアピールめっちゃして、玉砕覚悟で告白したらまさかの返事はOKで。嬉しすぎてこんないかつい見た目してるのに先輩の目の前でボロボロ泣いた。
俺はこう見えて恋したり人と付き合ったりするの初めてだから、恋人同士ですることは全部先輩任せ。
デートは基本俺の家が多い。というか、ほぼ100%俺の家。あとはラブホとか。俺は遊園地とか行きたいなとかも思うんだけど、そういう場所だといちゃいちゃできないだろ?って先輩に言いくるめられて結局行けてない。
家でのデートはぐだぐだしてその後はセックス。兄ちゃんがいても構わず始めてくる。兄ちゃんは俺らのこと知ってるから大丈夫といえば大丈夫なんだけど、やっぱ身内に喘ぎ声とかは聞かれたくないなーって思う。言えないけど。
俺は先輩がだいすきだし、先輩がいなくなったら生きていける気がしないから、先輩に我が儘とか自分の意見は基本言わない。
先輩はべたべたくっつかれるのもあんますきじゃないらしいから、くっつきたくても我慢。
セックスでも、放置プレイとか縛りプレイとか道具プレイとか色々調教されたけど、先輩だから全部嬉しい。むしろ、もっと先輩好みの身体にしてほしいなーって思う。
もっと先輩好みの人になりたい。
でも俺は知っている。
先輩の好みの人。先輩の本当にすきな人。
見ちゃったんだよねー。友達に出掛ける予定ドタキャンされて、渋々家帰ったら、兄ちゃんと先輩がセックスしてるとこ。
先輩俺とするときはバックでしかしないくせに兄ちゃんとは正常位でしてるし、俺の名前はセックス中絶対呼んでくれないのに兄ちゃんの名前はすっごい甘い声で呼んでるし。
兄ちゃんも身体からすきすきオーラ大量に出してんの。声も甘いし目もとろけそうだった。
瞬間で理解した。俺は兄ちゃんの変わりだったんだなーって。俺と先輩が付き合い始めた時兄ちゃんには彼女いたし。最近別れたって聞いていたけど。
俺もバカじゃないから、最近二人の様子がおかしいことには気付いてた。でも、知らない振りをしてた。だって知らない振りをしてれば、先輩と形だけでも付き合ってられる。
でもこの日、二人がセックスしているところを見たらさすがにもう無理だなって思った。俺は知らない振りなんてできない。
悲しくて悔しくてどうしようもなかった。
でも、先輩を取り返す気にはならなかった。
先輩にすきなんて言ってもらったこと一度もなかったから。
数日後、俺は先輩に別れを告げた。
先輩がとてもすっきりした表情だったのが今でも俺の頭に強く残っている。
その後、大学生になった兄と先輩は同棲を始めた。
俺は、県外の大学へ進学することを決めた。
一年後、俺はとある店でとある人に恋をするのだが、それはまだ先の話である。
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