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火曜日 「私って、そんなに頑固そうにみえますか?」 午後の日差しが目に痛い営業2課。の、お隣の会議室。会議後の後片付けを終えたクラルは、会議後のコーヒー一杯を傾けつつも回収した資料を小脇に抱えてくれているココに、ぽつんと呟いた。 「いや……第一印象は違うね」 ココの返事はフォローの様で、フォローになっていない。 なまえは横目で一寸ココを睨む。ココは軽く肩を竦める。 「誰かに何か言われたのかい?」と、カップを傾けてココ。 「……そう言う訳ではありませんが」歯切れ悪く、なまえ。 真後ろにある大きな一枚硝子には8月のビル群が映って、外からはデモクラシーの叫び声。法改正の提案を声高く反対している。追い水が遠くの路面を濡らして、緑のデミオが見事なスリップでガードレールに衝突。 ココは顔を顰めて視線を外から室内に移す。 「どうなさいました?」 机を拭いていたなまえが顔を上げる。幸い、部長が残した珈琲のシミと格闘していた彼女は目撃者の条件を見事にスルーしている。 「いや……凄い日差しだと思ってね」 「すっかり夏日ですからね」 「もう終わるかい?」 「後少しです――はい、おしまい」 「ご苦労様」 室内の空調を切って、ココは労う。いつの間にか歩を進めて、扉の前。 「お待ちになっていなくても宜しかったのに」と、なまえ。 「ついでさ。この後外出だから、今の内に一息つけておきたくてね」と、澄ました調子でココ。 どこからかサイレンの音が響いて来た。デモクラシーの叫びとセッションする。 「救急車?熱射病の方でも出たのかしら?」 「さてね。それよりなまえ君。次のプレゼンの資料どうなってる?」 「――ああ、そちらでしたら……」 会議室のドアが閉まって、二人の足音はフロアに消えた。
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